第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第4章 人事行政分野における国際協力

◎ 人事院では、毎年、主要国の人事行政機関の幹部職員等を招へいし、人事行政の最新の実情について意見交換を行っている。平成28年度は、ドイツ及び英国から政府職員を招へいし、「公務の人材確保と能力開発・キャリア形成」をテーマに、日本行政学会との共催による国際講演会を実施した。

◎ 人事院は、開発途上国の公務員制度改善のための支援として、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じて研修への協力や個別の支援を行っている。平成28年度は、ベトナムへの採用試験制度改革や研修実施能力の強化のための研修、カンボジアへの国家公務員の給与制度や研修の実施運営などに関する研修、ボツワナへの記述式試験・人物試験の実施・運営方法や専門職種の人材確保を促す給与制度等の仕組みに関する研修などを実施した。

◎ マンスフィールド研修は、米国連邦政府職員に対し、各府省等における日常業務を通じた研修の機会を与えることにより、日本について深い理解を持った米国連邦政府職員を育成することを目的とするものである。平成7年に本研修が開始されてから、平成28年までに、合計140人の研修員が日本で研修を行った。

(1)主要国政府幹部職員等招へい事業

人事院は、人事行政の専門機関として、各国人事行政機関との交流を通じて人事行政分野における協力を推進するとともに、我が国の公務員制度が直面する課題に関し各国の経験や取組から示唆を得ることを目的として、毎年、主要国の人事行政機関の幹部職員等を招へいし、人事行政の最新の実情について意見交換を行っている。平成22年度からは、2か国から同時に招へいし、日本行政学会との共催により、日本を含めた3か国の状況を比較しながら議論するシンポジウムを実施してきた。

平成28年度においては、日本の公務における人材確保・育成を取り巻く課題を見据え、この点に関するドイツ及び英国における事情や取組を把握するため、11月、両国の人事行政機関幹部職員を招へいして「公務の人材確保と能力開発・キャリア形成」をテーマとした国際講演会を日本行政学会との共催により実施した。

講演会においては、ドイツ連邦内務省公務員局局長常任代理のミヒャエル・ショイリング氏から、ラウフバーン(資格要件・専門分野により分類される官職群)の枠組みの中での官吏の採用・異動・昇任の実態や研修の内容、とりわけ管理職への昇進や教育などについて、また、英国内閣府公務人材担当課長のアンナ・サンダース氏から、外部への空席公募の推進、若者の採用、優秀な人材を幹部に育成していくための組織的育成スキーム、職務機能や専門分野の強化などの取組について、それぞれ詳しい説明がなされた。当日は、大学教授等120名以上が参加し、会場からも、就職先としての公務の魅力等に関して質問が出された。

(2)開発途上国等に対する技術協力

人事院は、開発途上国の公務員制度改善を支援するため、JICAが主催する開発途上国政府職員を対象とした国際的な集団研修の実施等に協力するほか、要請に応じ個別の国への支援を行っている。

その一つとして、平成24年度末から人事院はJICAを通じ、ベトナムにおいて、主に幹部公務員育成を行う中央研修機関であるホーチミン国家政治学院(HCMA)が副大臣級指導者候補者511人を対象に3か年計画で初めて実施する「国家指導者候補者研修」(計6コース)に対して、討議型研修実施の支援を行ってきた。さらに、平成26年度からベトナムの公務員採用試験制度の改革への協力・支援を行っており、平成28年度も同国政府の試験制度改革担当官を対象とする訪日研修の企画立案の支援と受入れに加え、同国に専門家を派遣しセミナー等を実施した。また、HCMAの研修実施能力を強化するための支援として、HCMAの講師陣を対象とした研修技法等に関する訪日研修も実施した。

カンボジアに対しては、同国の公務員給与制度改革を担当する14人の職員を対象に、我が国の国家公務員給与制度とその運用の解説などを内容とする訪日研修及び同国政府の幹部職員研修機関である王立行政学院の6人の職員を対象に、公務員研修所が実施する行政研修(課長補佐級)国際コースへの参加及び研修の実施運営状況の視察などを内容とする訪日研修を新たに実施した。

ボツワナに対しては、同国政府で公務員制度を所管する公務員管理局等の職員を対象に、政策の企画立案に必要な能力、総合的な判断力・思考力等を見るための記述式試験及び人柄、対人的能力等を見るための人物試験の実施・運営方法等を指導したほか、専門職種の人材確保を促す給与制度等の仕組みに関する指導などを内容とする新たな訪日研修を、公務員管理局やボツワナ公務員大学をはじめとする23人の職員に対して実施した。

(3)マンスフィールド研修

マンスフィールド研修は、日米両国の友好関係の構築に尽力されたマイク・マンスフィールド元駐日米国大使にちなんで創設されたものであり、日本について深い理解を持った次世代の米国連邦政府職員を育成することを目的とし、平成6年4月に米国連邦法として制定されたマイク・マンスフィールド・フェローシップ法に基づいて、翌平成7年から米国国務省により実施されている。平成28年6月には、第20期研修員10人が日本での研修を無事終了して帰国、同年7月には第21期研修員10人が来日し、研修を開始した。これまで27の米国政府機関と米国議会から、合計140名の研修員(第1期~第21期)が研修に参加している。

研修員は、約2か月間の石川県でのホームステイの後、約10か月間、日本の政府機関等において、日常の業務に接しながら、日本語を使って研修を受ける。研修員の日本での受入機関は、政府機関、国会議員事務所、地方公共団体、民間企業等と多岐にわたっている。

人事院は、外務省と協力しつつ、研修員の各府省等への受入れの協議・調整をはじめ、オリエンテーション、調査見学、公務員研修所の実施する行政研修への参加等の企画・実施を行ってきた。

本研修の成果について、研修員からは、配属部署で良い人間関係が構築できた、日本の立場を理解できた、より良い日米関係の構築に有意義で重要である等、また、受入機関からは、研修員を通じて米国政府の考え方を理解でき、日米双方にとって有意義なものである等の声が多く寄せられている。また、研修に参加した多くの研修員は、研修終了後も在日米国大使館、米国通商代表部、財務省、商務省、司法省などをはじめ、米国連邦政府職員として政府機関に勤務している。

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