第1編 《人事行政》

【第2部】 魅力ある公務職場の実現を目指して

第1章 公務職場に関する意識調査

第2節 調査結果

2 領域別の結果

調査結果の集計や統計的分析を行うに当たり、全ての質問項目を対象として因子分析を行った。その結果、抽出された10の因子を、それぞれの内容に即し、【国民本位の所管行政、職員の人事管理、仕事のやりがい、公共に奉仕する姿勢、職場の活性、組織方針の徹底、上司のマネジメント、適正な業務負荷、法令の理解・遵守、全体的な意識】という領域として定義した。

領域ごとに平均値を算出した結果は、図6のとおりである。

図6 領域ごとの平均値
図6 領域ごとの平均値のCSVファイルはこちら

公務職場に関する意識について各領域を比較すると、【法令の理解・遵守】が3.83、【国民本位の所管行政】が3.61、【仕事のやりがい】が3.56となっており、肯定的な評価がなされているが、一方で、【職員の人事管理】が3.13、【職場の活性】が3.31となっており、やや否定的な評価がなされている。全質問項目の総平均値は、3.42となっており、全体的には中立的な評価がなされている。

以下、領域ごとに、質問項目の内容及び回答の傾向について記述する。なお、図に掲げている各質問項目の回答割合の数値は資料1に、また、各質問項目の属性別の平均値は資料2に掲げるとおりである。

(1)国民本位の所管行政

【国民本位の所管行政】の領域は、図7のとおり、所管行政に関する4の質問項目からなっている。

図7 【国民本位の所管行政】の領域の質問項目とその回答状況
図7 【国民本位の所管行政】の領域の質問項目とその回答状況のCSVファイルはこちら

質問項目のうち、「府省庁の社会貢献度」は3.65、「所管行政の責任ある推進」は3.77、「府省庁の国民への奉仕度」は3.73と肯定的な傾向が見られた。このことから、職員は、所属する府省庁が責任を持って所管行政を推進することを通じて、国民や社会に奉仕・貢献していると感じているのではないかと考えられる。

なお、「国民のニーズの行政への反映」は上記の3つの質問項目ほど肯定的な傾向が見られなかった。これは、今回の調査対象者が本府省に勤務する職員となっていることもあり、行政の現場で国民と接触する機会が少なく、国民のニーズを自分の仕事に直接反映できる場面が限られていることが背景としてあるのではないかと考えられる。

(2)職員の人事管理

【職員の人事管理】の領域は、図8のとおり、職員に適用される人事制度や職員に対する人事管理に関する17の質問項目からなっている。

図8 【職員の人事管理】の領域の質問項目とその回答状況
図8 【職員の人事管理】の領域の質問項目とその回答状況のCSVファイルはこちら

質問項目のうち、「キャリア選択の機会」は3.06、「異動における適性・育成の考慮」は3.05となっており、否定的な傾向が見られた。このことから、人事当局主導で行われている国家公務員の人事異動においては、自分に必要とされている能力や専門性の方向性が必ずしも明確になっていないと感じている職員が多いのではないかと考えられる。

また、「福利厚生の満足度」は2.83、「退職後の生活の安心感」は2.58となっており、否定的な傾向が見られることを踏まえると、福利厚生や退職後の生活の面に心配の種があり、職員が安んじて職務に精励しているとは言えないのではないかと考えられる。

「人事制度による動機づけ」は2.63と否定的な傾向が見られ、上記の要因が勤務意欲に影響を与えているのではないかと考えられる。

他方で、「人事評価の納得感」はやや肯定的な傾向が見られ、また、「能力本位の昇進」及び「女性活躍推進」は中立的な傾向が見られた。

(3)仕事のやりがい

【仕事のやりがい】の領域は、図9のとおり、仕事の達成と自分の成長に関する5の質問項目からなっている。

図9 【仕事のやりがい】の領域の質問項目とその回答状況
図9 【仕事のやりがい】の領域の質問項目とその回答状況のCSVファイルはこちら

質問項目のうち、「権限委譲」は3.69と肯定的な傾向が見られ、「業績目標の納得感」、「仕事を通じた成長実感」もやや肯定的な傾向が見られた。このことから、職員は上司から挑戦しがいのある仕事を任されており、納得して仕事に取り組み、その結果、自分も成長できていると感じているのではないかと考えられる。

(4)公共に奉仕する姿勢

【公共に奉仕する姿勢】の領域は、図10のとおり、職員が具体的な職務を行う際の心構えや姿勢に関する7の質問項目からなっている。

図10 【公共に奉仕する姿勢】の領域の質問項目とその回答状況
図10 【公共に奉仕する姿勢】の領域の質問項目とその回答状況のCSVファイルはこちら

質問項目のうち、「仕事の改善姿勢」は3.84、「国家像・社会像の構想」は3.76、「仕事を通じた貢献の実感」は3.71となっており、肯定的な傾向が見られた一方、「奉仕の実感の機会」は2.92と否定的な傾向が見られた。これは、職員は自らの理想に向かって、より良い仕事をしようと取り組み、所管行政にも貢献していると感じているが、調査対象者が本府省に勤務する職員となっていることもあり、自身が国民に奉仕しているということを身をもって実感できる機会が少ないことが背景にあるのではないかと考えられる。

(5)職場の活性

【職場の活性】の領域は、図11のとおり、職員が所属している課又はこれに相当する組織上の単位についての18の質問項目からなっている。

図11 【職場の活性】の領域の質問項目とその回答状況
図11 【職場の活性】の領域の質問項目とその回答状況のCSVファイルはこちら

質問項目のうち、「明るい雰囲気」は3.78と肯定的な傾向が見られ、「情報交換」、「メンバーのサポート」、「チームでの協力」は中立的な傾向が見られた一方、「職場での切磋琢磨」は3.07、「職場目標の達成志向」は3.16、「職場のチャレンジ志向」は3.07、「組織間の連携」は3.19となっており、否定的な傾向が見られた。

このことから、職場には明るい雰囲気があり、情報交換や悩みを抱えている職員への声掛けなども行われており、コミュニケーションは行われているものの、競争、挑戦といった面での職場の活性が低いのではないかと考えられる。

また、「業務の効率化」は2.94と否定的な傾向が見られており、職場における重要な課題となっているのではないかと考えられる。

(6)組織方針の徹底

【組織方針の徹底】の領域は、図12のとおり、組織方針に関する3の質問項目からなっている。

図12 【組織方針の徹底】の領域の質問項目とその回答状況
図12 【組織方針の徹底】の領域の質問項目とその回答状況のCSVファイルはこちら

質問項目のうち、「組織方針の浸透度」、「組織方針の実践」はやや肯定的な傾向が見られたが、「現場重視の姿勢」は中立的な傾向が見られた。これは、今回の調査対象者が本府省に勤務する職員となっていることもあり、組織方針を意識して仕事を行っている一方で、行政の現場で国民と接触する機会が少なく、現場の情報や意見を施策に直接活用できる場面が限られていることが背景にあるのではないかと考えられる。

(7)上司のマネジメント

【上司のマネジメント】の領域は、図13のとおり、課長など職場において日常の業務を直接指揮命令する者についての14の質問項目からなっている。

図13 【上司のマネジメント】の領域の質問項目とその回答状況
図13 【上司のマネジメント】の領域の質問項目とその回答状況のCSVファイルはこちら

質問項目のうち、「部下の意見の傾聴」が3.64、「上司の公平性」が3.66、「相談・報告のしやすさ」が3.65、「上司への信頼度」は3.71と肯定的な傾向が見られた一方、「キャリアに関する部下への助言」は3.16と否定的な傾向が見られた。

このことから、上司は部下とのコミュニケーションを心掛けており、部下からも信頼されている傾向にあるが、公務においては人事当局主導で人事が行われることもあり、キャリアに関して上司が部下に助言することは十分なされていないのではないかと考えられる。

(8)適正な業務負荷

【適正な業務負荷】の領域は、図14のとおり、職員の職務や職場における業務負荷に関する6の質問項目からなっている。

図14 【適正な業務負荷】の領域の質問項目とその回答状況
図14 【適正な業務負荷】の領域の質問項目とその回答状況のCSVファイルはこちら

質問項目のうち、「業務量の許容度」は3.63、「ワーク・ライフ・バランス」と「仕事の裁量の付与」は3.64となっており、肯定的な傾向が見られた一方、「業務量に応じた人員配置」は2.73となっており、否定的な傾向が見られた。このことから、ワーク・ライフ・バランスを意識しつつ、自らの裁量により何とか業務を処理できているとは感じているものの、職場においては業務量に応じた人員配置がなされておらず、業務負荷が大きいと認識しているのではないかと考えられる。

(9)法令の理解・遵守

【法令の理解・遵守】の領域は、図15のとおり、コンプライアンスに関する7の質問項目からなっている。

図15 【法令の理解・遵守】の領域の質問項目とその回答状況
図15 【法令の理解・遵守】の領域の質問項目とその回答状況のCSVファイルはこちら

質問項目のうち、「法令やルールの理解度」は4.16、「法令や倫理の遵守度」は4.11、「セクハラの防止度」は4.06と肯定的な傾向が見られた。このことから、職員には服務上、法令遵守義務が課されているが、職員も当然に法令や倫理を遵守して仕事に臨んでおり、また、セクシュアル・ハラスメントも防止されていると感じている職員が多いのではないかと考えられる。

(10)全体的な意識

【全体的な意識】の領域は、図16のとおり、上記の9つの領域を総合した職員の全体的な意識に関する4の質問項目からなっている。

図16 【全体的な意識】の領域の質問項目とその回答状況
図16 【全体的な意識】の領域の質問項目とその回答状況のCSVファイルはこちら

質問項目のうち、「府省庁の職場満足度」は3.63、「国家公務員としての誇り」は3.81と肯定的な傾向が見られた一方、「府省庁の職場推奨度」は3.06と否定的な傾向が見られ、「自分の仕事の社会的評価」もやや否定的な傾向が見られた。このことから、職員は、自分自身としては、所属する府省庁で働くことに満足しているとともに、国家公務員としての誇りも持っているが、社会から必ずしも相応の評価を受けていないと感じ、諸条件を踏まえると他者に積極的に勧めたいとまでは思っていないのではないかと考えられる。

Back to top