第1編 《人事行政》

【第2部】 魅力ある公務職場の実現を目指して

第1章 公務職場に関する意識調査

第2節 調査結果

4 属性による分析

各質問項目について、回答した職員の職制段階、年齢、採用区分、性別、勤務形態の属性ごとに分析を行った。

(1)職制段階

職制段階別に全85の質問項目の回答の平均値を算出すると、図17のとおりとなっている。

図17 職制段階別の回答の平均値
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職制段階別の平均値を見ると、数値が係員級から係長級で落ち込み、課長補佐級で回復し、室長級、課長級と上がるにつれて、数値が伸びている。こうした傾向が特に【仕事のやりがい】、【公共に奉仕する姿勢】、【組織方針の徹底】の各領域で強いことを踏まえると、課長級職員は施策の責任者として権限を有しており、自らの裁量で仕事を進められる部分が大きく、仕事にもやりがいを感じているが、係長級職員は、係員級職員が少ない中、様々な業務を上司の指示を受けて短期間で処理せざるを得ず、仕事の意義を見出しにくいという立場の違いが関係している可能性があるのではないかと考えられる。

また、全85の質問項目を見ても、課長級が最大値となった質問項目が84、係長級が最小値となったものが75に達するなど、全般的に課長級に肯定的な傾向が見られ、係長級に否定的な傾向が見られており、顕著な乖離が認められる。このことから、全般的に課長級は仕事に満足していると認識しているのに対し、部下は必ずしもそうした認識を持つに至っていないという、認識のギャップが存在していることが分かる。

他方、ただ一つ課長級が最小値となったものは「奉仕の実感の機会」であり、係員級が最大値を付けた後、職制段階が上がるにつれて数値が下がっている。これは、本府省の課長級職員に比べ、係員級職員は外部からの照会対応などを通じて国民と直接接する機会が比較的多いことも関係しているのではないかと考えられる。

(2)年齢

年齢別に全85の質問項目の回答の平均値を算出すると、図18のとおりとなっている。

図18 年齢別の回答の平均値
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年齢別の平均値を見ると、24歳以下が最も高いものの、急激に低下し、30~34歳で底を打った後、年齢が上がるにつれて上昇し、50~54歳で再び高くなるが、再び減少に転じている。また、全85の質問項目のうち、24歳以下が最大値となった質問項目が54、30~34歳が最小値となったものが50となっており、全般的に24歳以下に肯定的な傾向が見られる一方、30~34歳に否定的な傾向が見られており、乖離が認められる。

これは、本府省に勤務する24歳以下の職員は採用から1~2年の職員がほとんどであること、他の年代との傾向の乖離が認められる領域が【職場の活性】や【上司のマネジメント】であること、他の年代に比べて「積極的な助言指導」及び「キャリアに関する部下への助言」に対する肯定的な傾向が強いことを踏まえると、24歳以下の職員は、新人職員として希望を持って仕事に臨み、OJTなどを通じて育成されている段階であり、周囲から一定の配慮を受けている結果ではないかと考えられる。

また、50歳台の平均値が高くなっているのは、一般的に職制段階の高い職員に年齢の高い職員が多いことから、(1)で述べたことと同様の背景があるものと考えられる。

60歳以上になると平均値が低下していることから、他の年代に比べて否定的な傾向が強くなっている質問項目を見てみると、「権限委譲」、「積極的な助言指導」、「給与の満足度」が挙げられる。60歳以上の職員の多くは定年退職を経て再任用された職員であることから、再任用職員は再任用前と比べて裁量の少ない仕事に従事していること、上司から指導・助言を受ける機会が少ないこと、再任用前と比べて給与水準が低くなっていることなどが背景にあると考えられる。

(3)採用区分

採用区分別に全85の質問項目の回答の平均値を算出すると、図19のとおりとなっている。

図19 採用区分別の回答の平均値
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採用区分別の平均値を見ると、全般的に、他の試験等による採用者に比べて、総合職試験等による採用者が高くなっている。

回答者の属性を見てみると、職制段階別の平均値が最も低かった係長級職員の49.2%が一般職(大卒)試験等による採用者であることから、(1)で述べたことと同様の背景がある程度反映されているのではないかと考えられる。

(4)性別

男女別に全85の質問項目の回答の平均値を算出すると、図20のとおりとなっている。

図20 性別の回答の平均値
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他の属性における回答の差と比べると、男女間での回答の差は僅かであり、全般的には、公務職場に対する意識において性別による違いはほとんどないものと考えられる。また、【職員の人事管理】の領域に属する「女性活躍推進」の回答の差も小さい。

他方で、女性の方が否定的な傾向が見られた質問項目を見てみると、【公共に奉仕する姿勢】、【仕事のやりがい】の領域に多く、特に乖離が認められる質問項目は、「業績目標のチャレンジ性」、「仕事におけるチャレンジ」、「仕事を通じた成長実感」、「自身の将来イメージ」、「ロールモデルの存在」、「仕事のための自己研鑽」となっている。

こうした結果から、公務においては従前から女性の採用・登用の拡大に取り組んできており、さらに近時の政府全体での推進の機運もあって、女性の活躍推進が徐々に進んでいると認識されているが、登用に当たって重要とされている、成長につながる仕事や経験の機会の付与、将来の職業生活における目標の設定、それに向けた能力開発といった点については、女性はまだ不十分と感じているのではないかと考えられる。

(5)勤務形態

勤務形態別に全85の質問項目の回答の平均値を算出すると、図21のとおりとなっている。

図21 勤務形態別の回答の平均値
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勤務形態による回答の差はほとんどなかったが、「ストレスの許容度」、「業務量に応じた人員配置」、「ワーク・ライフ・バランス」については、フルタイム勤務職員よりも短時間勤務職員の方が肯定的な傾向が見られ、短時間勤務職員は仕事と家庭を両立し得る働き方ができていると感じているのではないかと考えられる。

他方、「自身の将来イメージ」、「権限委譲」、「仕事におけるチャレンジ」、「ロールモデルの存在」、「給与の満足度」については、フルタイム勤務職員よりも短時間勤務職員の方が否定的な傾向が見られた。短時間勤務は育児短時間勤務と再任用短時間勤務とに大別でき、調査上は両者を分離していないが、いずれも、短時間勤務が可能となるような業務配分となっており、仕事を通じた成長の機会が限られていること、勤務時間に応じて給与が減額されることなどが関係しているのではないかと考えられる。

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