人事管理を適切に行うためには、客観的なデータに基づいて、職員の意識や職場の実態を把握し、施策を講じることが重要であり、今回、民間企業、地方公共団体、外国政府等における意識調査の手法を活用して、国家公務員に対する多角的・包括的な意識調査を初めて実施し、調査結果の集計・分析を行った(手法の詳細については補論を参照)。
その結果、これまで言われてきたように、公務職場については、国民や社会に奉仕できること、仕事を通じて個人が成長できるという点で仕事のやりがいがあること、また、コンプライアンスなどの面で職場環境が良好であることが、大きな魅力となっていることが改めて確認できた。引き続きこうした魅力を高め、国家公務員採用試験の受験者層も含めて広く発信していくことが重要である。
また、長年、公務員人事管理の課題とされてきた、女性の採用・登用の推進や人事評価制度への理解については、これまでの取組の効果が現れてきており、これを継続していくことが重要である。
これに対し、職員の人事管理や職場の活性などの面において、人事配置や人材育成の方向性、職場の活性の低下、業務負荷の影響など、将来の公務運営にとっての課題が明らかになったことから、人事院としては、この現状を真摯に受け止め、関係各方面の意見を聴きながら、公務職場の実態を踏まえた人事制度の整備や人事管理の改善に努めていく所存である。また、前述のとおり、職員の人事管理や職場の活性の在り方は、組織方針の徹底や上司のマネジメントとも密接に関係していることから、上記の課題を解決していくためには、各府省における組織マネジメントや上司のマネジメントの改善も重要であり、本報告を踏まえた今後の取組に期待したい。
今回の調査や分析は、学術的な方法論に依拠し、様々な組織で行われている手法を参考として実施したものであり、データの取扱いや評価における客観性を重視するよう心掛けたが、調査や分析にかけられる時間に制約があり、今回示した解釈とは別様の解釈が成り立つ余地もあるものと考える。そのため、末尾に参考として主な調査結果を掲げるとともに、人事院のホームページ上で利用可能な形で公表する予定であり、今後、各方面において新たな研究が行われることを期待してやまない。
なお、今回は時間の制約から、調査対象が、行政職俸給表(一)が適用されている職員で、かつ、本府省に勤務する職員に限定されている。したがって、本報告で述べているのは、いわゆる「霞が関」における現状であり、地方支分部局や施設等機関などに勤務し、多様な業務に従事している多数の職員や本府省に勤務するほとんどの非常勤職員の意識は含まれていない。今回の調査や分析の方法を見直した上で、将来的には、全ての国家公務員を対象とした意識調査を実施する必要があるものと考える。
本報告を契機として、公務職場に関する議論が喚起され、公務職場の魅力を高める取組を進めることにより、公務に有為な人材を確保するとともに、職員が生き生きと働きその能力を十分に発揮することを通じて、行政運営を更に向上させていくことが重要であると考える。