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第1編 《人事行政》

【第2部】女性国家公務員の採用・登用の拡大に向けて

第3章 諸外国における女性国家公務員の採用・登用の状況と課題

第7節 諸外国の取組から得られる示唆

2 各国における女性の採用・登用促進のための取組のポイント

この問題において、日本と各国の比較を行うに当たっては、各国における女性の就労等への意識の違いなども考慮する必要がある。例えば、男女の就業の状況を示す労働参加率についてみると、我が国に比べ、欧米各国では男女差は小さく、女性の労働参加が進んでいるといえる(資料4)。また、将来の人材供給という面から就学状況をみると、欧米各国とも女性の方が若干ではあるが大学在学者数は多い(資料5)。さらに、専攻分野については、公務への人材供給源となっている法律・経済等の学部において、日本では女性が全体の3分の1程度と少ないが、アメリカ、フランス及びドイツでは男女が同じような割合となっている。なお、自然科学系については、医学・薬学・保健等の分野で女性が多く、工学等の分野で女性が少ない傾向がみられる(資料6)。

このように、欧米各国では、大学教育修了のレベルで公務組織で採用・登用され得る候補者に男女差が少なく、女性の採用や登用のための施策がより直接に効果を発揮しやすい面があったと考えられる。

このほか、欧米各国では、職務の範囲が明確に定義された職務記述書があり、原則としてそれに基づく公募により採用、異動、昇進が行われており、女性の登用も人事当局が人事案を作って行うのではなく、女性職員自身が応募し選抜されることにより行われることに留意する必要がある。

(1)長期間にわたる積極的な取組

イギリス、アメリカ及びスウェーデンでは1970年代初めから40年間にわたり採用・登用や両立支援の取組を続け、ドイツでは1980年代半ば頃から、韓国は1980年代終わり頃から積極的な取組を開始している。このように、各国は、2000年前後から積極的な取組を開始したフランスを除けば、30~40年にわたり継続した積極的な取組により、女性の採用・登用の拡大に成果を上げている。

(2)目標の設定とその達成を目指した取組

イギリスでは、各省が女性、人種、障害者等の登用の数値目標を設定して、その達成を図るためのメンタリングなどの取組を行っている。アメリカでは数値としての目標設定は行っていないが、差別禁止の理念の下、各省庁において行動計画の策定・実施を行っている。一方で、フランスにおいては、数値目標の設定による取組のみでは女性の登用について期待する効果が得られなかったことから、局次長以上の幹部への登用時についてのみクォータ制を適用している。また、ドイツでは、管理職員などで女性が50%未満の場合に、候補者の資格が同一であるならば男性の候補者の事情を勘案した上で、女性を優先することとしている。なお、韓国では、採用時にのみクォータ制を適用しているが、登用は数値目標の設定により推進している。

これらの国では、成績主義にも配慮しつつ、それぞれの事情に応じて、目標や計画を策定した上でそれを実施し、評価するという一連の流れの下で、積極的な募集活動、研修やメンタリングなどの機会の充実、幹部職員の意識改革などの取組を行っている。

なお、政治の分野についてみると、フランス及び韓国においては、法律により候補者のクォータ制が、イギリス、ドイツ及びスウェーデンでは政党による自発的なクォータ制が導入されているなど、行政において女性の採用・登用を進めるだけでなく、女性国会議員の増加にも取り組んできている。

(3)柔軟な働き方を可能とする両立支援制度の整備

育児休業制度等については、アメリカ、フランスのように無給の場合もあるが、他の国については、一定の範囲で手当等の支給がある。また、休業期間については、アメリカ、フランスでは短期間で復帰することが一般的であるが、ドイツやスウェーデンなどでは育児休業が長期間にわたる場合には、復帰後の昇進等において不利になりがちであることから、男性の育児休業の取得を促進している。

育児休業からの復帰後は、短時間勤務などの両立支援制度や保育施設等の保育サービスの利用を行うこととなる。アメリカでは、短時間勤務のほか、フレックスタイムやテレワーク等の制度を組み合わせることが一般的である。フランスでは、両立支援制度よりはむしろ、様々な保育サービスを積極的に利用している。ドイツでは、短時間勤務などの制度の利用が進んでいるが、利用者は女性である場合が多く、そうした制度の利用が昇進等に不利にならないよう、管理者の意識啓発に努めている。韓国では、両立支援制度の利用状況が芳しくなかったことから、積極的な活用を促す取組を行っている。

このように各国とも両立支援制度の整備とその積極的な活用、保育サービスの利用の促進などにより、仕事と家庭責任の両立を図っている。


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