(1)超過勤務の上限規制の運用状況
国家公務員の超過勤務については、規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)により、超過勤務を命ずることができる上限を設定している。ただし、大規模災害への対処等の重要な業務であって特に緊急に処理することを要する業務(以下「特例業務」という。)に従事する職員に対しては、上限を超えて超過勤務を命ずることができるが、その場合には、各省各庁の長は、当該超過勤務に係る要因の整理、分析及び検証を行わなければならないこととしている。
各府省において上限を超えた職員について、令和3年度の状況を人事院が把握したところ、その状況は表1から表3のとおりである。本府省の他律的業務の比重の高い部署(以下「他律部署」という。)においては、28.1%の職員が上限を超えており、また、上限の基準別では、1箇月について100時間未満の上限を超えた職員が14.1%、2箇月から6箇月の平均で80時間以下の上限を超えた職員が19.9%となっていた。
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上限を超えた職員が従事した主な特例業務としては、大規模災害への対処、重要な政策に関する法律の立案、他国又は国際機関との重要な交渉のほか、新型コロナウイルス感染症対策関連業務、予算・会計関係業務、人事・給与関係業務、国会対応業務等があった。
令和3年度においては、他律部署において「国会対応業務」により上限を超えた職員割合は、依然として最も大きい状況であった。
(2)超過勤務の縮減に向けた取組
人事院は、令和4年4月に、超過勤務の縮減に向けた指導を徹底するため、勤務時間調査・指導室を新設した。令和4年度においては、本府省の35機関、地方の42官署に対して、勤務時間の管理等に関する調査を実施した。同調査においては、対象となる職員ごとに客観的な記録(在庁時間)と超過勤務時間を突合し、大きなかい離があればその理由を確認するなどして、客観的な記録を基礎とした超過勤務時間の適正な管理について指導を行った。
本府省の35機関に対する調査については、合計で約2,200人の直近1月分の在庁時間と超過勤務時間のデータを突合した。その結果、超過勤務時間はおおむね適正に管理されていたものの、超過勤務手当の追給や返納を行った事例等があった。また、長時間の超過勤務を行う職員に対する医師の面接指導については、多くの府省において、その担当部署から対象者に打診をしたものの受診していない状況が確認されたため、面接指導が確実に実施されるよう、各府省に指導を行った。
このほか、同室の調査や制度の運用状況の聴取の機会などを通じて、各府省に対し、特例業務について業務の実態に即して課室よりも細かく指定するよう指導を行うとともに、特例業務の範囲が必要最小限となるよう指導を行った。また、各府省のマネジメントに責任を有する者に対して、管理職員等のマネジメントに関する助言等を行うとともに、超過勤務の縮減に向けた各府省の主な取組を収集・整理した上で各府省に情報提供した。
さらに、超過勤務縮減の観点から、関係各方面への働きかけに向けて、国会対応業務等の超過勤務への影響や業務量に応じた要員確保の状況等を把握するため、各府省に対してアンケートを実施した。
国会対応業務に係る各府省アンケートの結果については、令和5年3月に公表するとともに、人事院総裁が4月3日及び4日に衆議院議長及び参議院議長を訪問して説明した。また、業務量に応じた要員確保及び人事・給与関係業務に係る各府省アンケートの結果については、同月に公表するとともに、人事院総裁が同月25日に国家公務員制度担当大臣を訪問して、国会対応業務に係る各府省アンケート結果とともに説明して御協力をお願いした。人事院としては、引き続き、関係各方面の御理解と御協力をお願いしていくこととしている。
【国会対応業務に係る各府省アンケート結果の概要】
- ・令和3年度の国会対応業務に関する超過勤務の状況について、「前年度(2年度)から状況は変わっていない」が多い。
- ・国会対応業務について改善を希望する事項として、多く挙げられたもの
質問通告の早期化・内容の明確化、質疑時間を考慮した質問通告数、質問主意書に係る回答期限の緩和、作業期間を考慮した資料要求の回答期限の設定、準備期間を考慮したレク日時の設定、レク内容を明確にした依頼等
【業務量に応じた要員確保及び人事・給与関係業務に係る各府省アンケート結果の概要】
〔1.業務量に応じた要員確保の状況〕
- ・令和3年度において、恒常的な人員不足が生じていなかったとするところは10府省等。それ以外の34府省等中、恒常的な人員不足の部署があった理由として、「定員が不足していたため」を挙げたのは30府省等、「欠員補充が困難であったため」を挙げたのは12府省等。
- ・定員管理を担当する部局への要望として、多く挙げられたもの
定員の増加・新設(現行の国家公務員のワークライフバランスの推進のための定員の増加など)、合理化目標数の緩和等
〔2.人事・給与関係業務の超過勤務への影響〕
- ・令和3年度の人事・給与関係業務に関する超過勤務の状況について、「前年度(2年度)と同程度」を挙げたのは19府省等、「前年度と比較して増加」を挙げたのは18府省等。
- ・人事・給与関係業務の制度官庁等への要望として、多く挙げられたもの
各種調査の簡素化、作業依頼の重複の解消、人事・給与関係業務情報システムの機能性・操作性の向上、各種制度の簡素化等