令和4年8月8日、人事院は国会及び内閣に対し、一般職の職員の給与について報告し、給与の改定について勧告を行った。
(1)公務と民間の給与比較に基づく給与改定等
ア 月例給
人事院は給与勧告を行うに当たり、毎年、「国家公務員給与等実態調査」及び「職種別民間給与実態調査」を実施し、国家公務員及び民間企業従業員の4月分の月例給を把握している。その上で、一般の行政事務を行っている国家公務員(行政職俸給表(一)適用職員)と民間においてこれに類似すると認められる事務・技術関係職種の従業員について、主な給与決定要素である役職段階、勤務地域、学歴、年齢を同じくする者同士の給与を比較している(ラスパイレス方式)。
令和4年は、「職種別民間給与実態調査」を、例年と同様、企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上の民間事業所を調査対象として実施した。また、「国家公務員給与等実態調査」においては、給与法が適用される常勤職員約25万人の給与の支給状況等について全数調査を行った。
両調査により得られた令和4年4月分の給与について、前記のラスパイレス方式により国家公務員給与と民間給与との較差を算出したところ、国家公務員給与が民間給与を平均921円(0.23%)下回っていたことから、民間給与との均衡を図るため、月例給の引上げ改定を行うこととした。
イ 特別給
令和3年8月から令和4年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、年間で所定内給与月額の4.41月分に相当しており、国家公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(4.30月)が民間事業所の特別給の支給割合を0.11月分下回っていたことから、支給月数を0.10月分引き上げ、4.40月分とすることとした。
(2)給与改定等
ア 俸給表
一般的な行政事務を行っている職員に適用される行政職俸給表(一)について、令和4年4月1日に遡って平均0.3%引き上げることとした。具体的には、民間企業における初任給の動向等を踏まえ、総合職試験及び一般職試験(大卒程度)に係る初任給について3,000円、一般職試験(高卒者)に係る初任給について4,000円、それぞれ引き上げることとした。また、これを踏まえ、20歳台半ばまでの職員が在職する号俸に重点を置き、初任の係長級(3級)の若手職員にも一定の改善が及ぶよう、30歳台半ばまでの職員が在職する号俸について、所要の改定を行うこととした。
その他の俸給表については、行政職俸給表(一)との均衡を基本に所要の改定を行うこととした。なお、専門スタッフ職俸給表及び指定職俸給表については、今回の俸給表改定が若年層を対象としたものであることから改定を行わないこととした。
イ 特別給
前記のとおり、国家公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数が、民間事業所の特別給の支給割合を0.11月分下回っていたことから、支給月数を0.10月分引き上げることとした。引上げ分の期末手当・勤勉手当への配分に当たっては、民間の特別給の支給状況等を踏まえつつ、勤務実績に応じた給与を推進するため、勤勉手当に配分することとした。
ウ その他
(ア) 博士課程修了者等の初任給基準の見直し
博士人材が活躍する環境を社会全体で整備する取組が進められていることや、官民を問わず人材獲得競争が厳しい技術系の人材を公務において確保する必要があることなどを踏まえ、博士課程修了者等の処遇を改善するため、令和4年中に初任給基準の改正を行い、令和5年4月から実施することとした。なお、これに伴い、在職者についても所要の措置を講ずることとした。
(イ) テレワークに関する給与面での対応
テレワークの実施に係る光熱・水道費等の職員の負担軽減等の観点から、テレワークを行う場合に支給する新たな手当について、具体的な枠組みの検討を進めていくこととした。検討に当たっては、テレワークに関する民間企業及び公務の動向を引き続き注視しつつ、手当の支給に関する事務負担等にも留意し、関係者との調整を行いながら、通勤手当の取扱いを含め、措置内容をまとめていくこととした。
(3)社会と公務の変化に応じた給与制度の整備
能率的で活力があり、一人一人が躍動できる公務組織の実現に向けて人材の確保や勤務環境の整備などの取組を進める中で、給与面においても、下記の課題に対応できるように、給与制度のアップデートに向けて一体的に取組を進めることとした。
取組に当たっては、令和5年に骨格案、令和6年にその時点で必要な措置の成案を示し、措置を講ずることを目指すこととした。また、定年引上げ完成を見据えた更なる措置等に向けて、その後も対応を図っていくこととした。
【給与上対応すべき課題】
- ・若い世代の誘致・確保
- ・積極的な中途採用や機動的で柔軟な配置・登用のニーズ
- ・採用者の年齢・経歴や採用後のキャリアパスの多様化
- ・働き方が多様化する中での職員の活躍支援や公務組織の全国展開の体制確保等の要請
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【取組事項】
- ・若年層を始めとする人材の確保等の観点を踏まえた公務全体のあるべき給与水準
- ・多様な人材の専門性等に応じた給与の設定
- ・65歳定年を見据えた60歳前・60歳超の給与カーブ
- ・初任層、中堅層、管理職層などキャリアの各段階における能力・実績や職責の給与への的確な反映
- ・定年前再任用等をめぐる状況を踏まえた給与
- ・社会や公務の変化に応じた諸手当の見直し