第1編 人事行政

第1部 人事行政この1年の主な動き

第5章 グローバル社会における人事行政分野の取組

 人事行政分野において国際社会に貢献する観点から国際交流を推進するとともに、他国の経験や取組から示唆を得ることを目的として様々な事業を展開した。

 人事行政に関する諸外国等の最新の実情について、情報交換を行い、国民にも広く知ってもらうため、シンガポール、オランダ及びデンマークから、各国の政府職員を迎え、「デジタル化と人事管理」をテーマとする一連のオンライン講演会を実施した。

 人事行政分野における日中韓三国の協力関係を強化するため、中国及び韓国の中央人事行政機関と日中韓人事行政ネットワークを構築し、各種協力事業を実施している。令和4年度は、トップ会談、局長級会談、「公平審査・苦情相談制度」をテーマとする共催シンポジウム、若手・中堅職員合同研修を、それぞれオンライン形式で実施した。

 ASEAN、日本、中国及び韓国の間で公務員制度・公務員人事管理に関する地域間協力を推進することを目的として開催されるASEAN+3公務協力会議(ASEAN Cooperation on Civil Service Matters+3)の枠組みの下、2年に一度開催される閣僚級会合に出席し、令和5年に日・ASEAN友好協力50周年記念事業を実施することを提案した。

内外の情勢変化が激しく、行政を取り巻く環境が複雑・高度化していく中、行政組織としてその時々の情勢に適切に適応していくためには、常に世界の動向に目を向け、新しい多様な考え方に触れ、柔軟に取り込んでいく国際性と開放性を持つ必要がある。

人事院では、人事行政分野において国際社会に貢献する観点から国際交流を推進するとともに、我が国の公務員制度が直面する課題に関し、他国の経験や取組から示唆を得ることを目的として事業を展開している。令和4年度は、日中韓人事行政ネットワークやASEAN+3公務協力会議(ASEAN Cooperation on Civil Service Matters+3)の枠組みの下における協力活動の推進のほか、我が国にとって重要課題である行政のデジタル化に関し、政府におけるデジタル人材の確保、デジタル化に伴う人事管理や働き方への影響について他国の先進事例を収集することを念頭に、以下の事業などを実施した。

(1)日中韓人事行政ネットワーク事業

人事行政分野における日中韓三国の協力枠組みとして、平成17年1月に、中国人事部(現:国家公務員局)及び韓国中央人事委員会(現:人事革新処)との間で日中韓人事行政ネットワークを発足させ、協力関係の強化に努めている。

ア 第9回トップ会談

令和5年2月22日、中国が実施を担当し、第9回トップ会談をオンライン形式で開催した。川本裕子人事院総裁、徐启方(シュ・チーファン)中国国家公務員局長、金勝鎬(キム・スンホ)韓国人事革新処長が出席し、これまでの協力活動を振り返りながら、今後の具体的な協力の方向性を確認するとともに、新たな協力覚書に合意・調印した。これにより、本ネットワークは協力関係を一層強化する方向で継続されることとなった。あわせて、「新時代の発展のための公務員の改革と革新」をテーマとして、それぞれの取組について意見交換を行った。

イ 第10回局長級会談

令和4年9月、日本が実施を担当し、三国の中央人事行政機関の局長級職員による第10回局長級会談をオンラインで開催した。人事院事務総局総括審議官、中国国家公務員局弁公庁二級巡視員、韓国人事革新処公務員労使協力官が出席し、今後3年間の協力の枠組みとなる第10次協力計画を策定するとともに、トップ会談の開催に向けた事前協議を行った。

ウ 第14回三国共催シンポジウム

令和4年6月、日本が実施を担当し、「公平審査・苦情相談制度」をテーマに第14回三国共催シンポジウムをオンラインで開催した。人事院公平審査局審議官、中国国家公務員局公務員管理第三局副局長、韓国人事革新処訴請審査委員会行政課長が出席し、職員への不利益処分に対する審査請求などの公平審査制度や、勤務条件等についての苦情相談制度に関する各国の制度やその背景にある考え方についての発表及び意見交換を行った。

エ 第14回三国若手・中堅職員合同研修

令和4年9月、中国が実施を担当し、第14回三国若手・中堅職員合同研修をオンライン形式で行った。三国の中央人事行政機関からそれぞれ3名の若手・中堅職員が参加し、各国の人事行政について発表を行い、意見交換を行った。

(2)ASEAN諸国との間の国際協力

ASEANでは、公務員制度・公務員人事管理に関する地域間協力を推進することを目的に、ASEAN公務協力会議(ASEAN Cooperation on Civil Service Matters)というネットワークを構築している。人事院は、このネットワークに日本、中国及び韓国の三国を含めたASEAN+3公務協力会議に、我が国の代表として参画し、各種協力事業の実施を支援している。

令和4年度は、第6回ASEAN+3公務協力会議閣僚級会議が8月にベトナムで開催され、令和3年から令和7年までの行動計画について、各国提案事業の実施状況報告や新規事業の提案等が行われた。我が国からは、日・ASEAN友好協力50周年である令和5年にASEAN+3公務協力会議加盟国の代表者を日本に招いて国際シンポジウム等を開催することを提案し、加盟国間で合意された。

(3)国際講演会

諸外国政府機関等との交流を通じ、人事行政に関する最新の実情について、情報交換を行い、国民にも広く知ってもらうことを目的として、毎年度、諸外国の政府機関職員等を招き、講演会を開催している。令和4年度は、デジタル化の推進が我が国としての重要課題であることも踏まえ、電子政府の取組や柔軟な働き方についての取組が進んでいるシンガポール、オランダ、デンマークの各国政府職員に本国からの講演を依頼し、オンライン講演会を開催した。いずれの講演会も、視聴者の利便性を考慮し、講演後一定期間、録画配信を行った。

ア シンガポール

令和5年1月に、シンガポール政府技術庁(GovTech)人事リーダーシップチームのマネージャーであるデズモンド・テオ氏を迎えて、「シンガポール政府におけるデジタル人材の誘致・育成・定着戦略」をテーマとした講演会を開催した。

講演及び質疑応答では、エリート教育や流動的な労働市場を背景として、学生への奨学金を通じた早い段階での人材発掘、各職員の適性やキャリア志向に合わせて専門的な人材を育成するための複線的なキャリアパスの提示、定着しやすい職場環境の醸成、ソーシャル・ネットワーク・サービスなどを駆使した公務のブランディング戦略など、様々な観点からの取組が紹介された。

イ オランダ

令和5年3月に、オランダ内務・王国関係省から講演者を迎えて、「オランダ政府におけるデジタルツールを活用した働き方」をテーマとした講演会を開催した。

講演及び質疑応答では、オランダ政府における人材戦略、職員が自由に勤務する場所・時間・方法を選べるハイブリッド・ワークの推進状況と今後の展望、ハイブリッド・ワークを可能とするためのオフィス環境・テレワーク環境の工夫、デジタル人材の確保のためのブランディングの取組などが紹介された。

ウ デンマーク

令和5年3月に、デンマーク公共財務管理庁から講演者を迎えて、「デンマーク政府におけるデジタルツールを活用した人事管理」をテーマとした講演会を開催した。

講演及び質疑応答では、採用、研修、勤務時間管理、従業員満足度調査などの様々な場面でデジタルツールの活用が進められていること、データを統一的に管理する統合システムを導入し、既存のシステムと連携することによりデータ管理の効率化が図られていることなどが紹介された。

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