第1編 人事行政

第2部 公務組織の人材マネジメントにおけるデータやデジタルの活用の可能性

はじめに

公務組織においては、近年、民間企業等との人材獲得競争がし烈になる中で国家公務員採用試験の申込者数は減少傾向にあり、若年層職員の退職者数が増加しているなど、人材の確保は極めて厳しい状況にある。また、公務組織に所属する職員一人一人の働き方に関する価値観やライフスタイルが多様化してきている。こうした状況下にあって、将来にわたって質の高い行政サービスを国民に提供し続けるためには、公務組織が内外の優秀な人材から選ばれる組織である必要があることは言うまでもなく、とりわけこれからの行政を担う若年層を公務組織にひきつけていくことが重要である。本報告では、そのために人事行政に求められることについて検討を深めることとした。

具体的には、第一に、令和2年度「公務職場に関する意識調査」について、特に若年層職員の公務職場に対する問題意識を把握するため、自由記述欄の再分析を行った。第二に、民間企業従業員と比較した国家公務員の意識の特徴を把握する観点から、国家公務員500人、民間企業従業員500人を対象とした「働く人の意識に関するアンケート~企業と公務の比較~」を新たに実施した。第三に、日頃、若年層職員に接している各府省の人事担当部局へヒアリングを実施し、人事運営上の幅広い課題認識を確認した。

これらの調査結果やヒアリングから把握した課題の中には、例えば業務量削減や業務効率化に関するものなど、人事院がこれまでも「公務員人事管理に関する報告」等において述べてきた内容もあり、これらについては引き続き不断の取組を推進することが必要である。

一方で、詳細は本文において述べるが、今回の調査から、個々の職員の希望や事情に応じたきめ細かな人材マネジメントを行っていくことが今後の行政を担う若年層を公務組織にひきつける上で重要であることが示された。同時に、各府省へのヒアリングからは、多くの府省においてこの点の重要性を既に認識してはいるものの、現有の人事担当部局や管理職員の人員体制にはそれを実現できるだけの余裕がない実態が認められた。

したがって、これからの公務組織にとって、個々の職員への配慮と効率性が両立した人材マネジメントを行うことが急務である。

人事院は、この課題への対応に当たり、人材マネジメントにおいてもデータやデジタルを活用していくことが有効であると考える。そこで本報告では、民間企業や外国政府等におけるデータやデジタルの活用の先行事例を収集し、公務組織への活用に関する知見を得ることとした。

本報告においては、第1章では公務組織をめぐる状況を概観し、第2章で「公務職場に関する意識調査」や新規に実施したアンケートの結果及び各府省人事担当部局に対するヒアリングの概要をまとめ、第3章で民間企業や外国政府等の人材マネジメントにおけるデータやデジタルの活用の具体事例を紹介している。第4章では、それらの事例等を踏まえ、公務組織の人材マネジメントにおけるデータやデジタルの活用について、まず検討に着手すべき論点等を中心に取りまとめている。

本報告を執筆するに当たり、アンケート調査に回答いただいた方々、ヒアリングに御協力いただいた各府省人事担当部局、民間企業、地方公共団体、外国政府の方々には感謝申し上げたい。

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