第1編 人事行政

第2部 公務組織の人材マネジメントにおけるデータやデジタルの活用の可能性

第3章 民間企業、外国政府等の事例から学ぶ

第1節 民間企業等の事例

2 日本電気株式会社(東京都港区)(スキルの可視化と育成への活用、組織課題把握のためのサーベイ、健康維持・増進へのデータやデジタルの活用の取組)

(1)スキルを可視化する取組

日本電気株式会社では、自身の成長が実感でき、かつ、キャリアを主体的に選択できるようにするため、また会社側でも適所適材を推進するため、平成30年から国内グループの職種・職務体系を共通化しポジションごとに職種・職務を明確化するとともに、「スキルマップ」を体系化し職種・職務別に求めるスキルを明確化した(なお、ITなど一部の職種のスキルについては、外部のスキルマップ等も参考にして設定している。)。それぞれのポジションに求めるスキルを従業員に明示することで、自身のキャリアイメージに近いポジションや、そのポジションに求められる役割、責任、必要なスキルが確認でき、イメージに近づくために必要なスキルが分かるようになっている。さらに、スキルの発揮状況を評価することで、上司の支援の下、継続的に能力開発を行うことができている。なお、スキルマップは全社に公開され、誰もが閲覧可能となっており、従業員一人一人が同社においてどのような経験を積み、スキル開発を行っていくか、主体的に考え行動することを促している。

同社は、スキルマップに加えて、スキル開発のための「トレーニングマップ」も公開し、継続的にスキルを獲得していく仕組みを構築している。従業員は、職種・職務、スキルの両面から、関連するトレーニングコースを自身で検索し受講することができる。

(2)エンゲージメントサーベイの取組

同社は、「従業員一人ひとりの創造力を高めるためには、自分たちが社会にとって意義や価値のある仕事をしているという誇りを感じて、150%の力が発揮できるエンゲージメントの高い職場にしていくことが必要」との考えから、従業員の満足度を測るだけでなく、働きがいや業務への没頭などの意味合いを包含する「エンゲージメント」にも注目しており、現在は、年に1回、65問程度のエンゲージメントサーベイを実施している。また、並行して、従業員のコンディションについて動的に把握する観点から、3か月に1回、25問程度のパルスサーベイを実施している。エンゲージメントサーベイは外部ツール、パルスサーベイは自社ツールを使っている。

同社は、同社が開発した因果関係分析ツールを用いてエンゲージメントサーベイの結果を分析し、各因子の目的変数に与える影響度を可視化することで施策検討にいかしている。管理職には、サーベイ結果のみならず分析の観点も伝えるため、組織ごとに、スコアの「読み解き説明会」を行っている(令和4年度は180回実施)。このような取組によって、今後も、上司が自ら自組織の課題を把握し改善を図ることができるようにしていくこととしている。なお、パルスサーベイについては、組織や個人の変化を促すためには結果をフィードバックすることが重要との考えから、様々な情報を可視化するツール(Business Intelligence tools:BIツール)を利用し、従業員が自組織のサーベイ結果を確認することができるようにしている。

(3)従業員の心身の健康維持・増進のためのデータやデジタルの活用

同社は、令和元年から健康経営にも注力している。自らコンディションを整えて日々の業務に挑戦する従業員を会社としてサポートする観点から、同社は従業員の健康診断結果に基づき、従業員各人の健康リスクを可視化するシステムを導入している。従業員は随時、ウェブ上でその内容を確認できる。また、生活を改善した場合の健康リスク数値の変化をシミュレーションすることができる等、健康維持・増進のためのヒントが得られるようになっている。このシステムの利用は任意であるが、利用した従業員ほど健康リスク数値の改善度が高いという統計結果も出ている。システムの利用に先立ち、従業員は、従業員個別の健康状況に応じてカスタマイズされた動画を視聴することとしている。こうした動画や様々なシミュレーションを示すことで保健指導が行いやすくなるとともに指導の納得感も高まっている。

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