第1編 人事行政

第2部 公務組織の人材マネジメントにおけるデータやデジタルの活用の可能性

第3章 民間企業、外国政府等の事例から学ぶ

第1節 民間企業等の事例

1 株式会社サイバーエージェント(東京都渋谷区)(従業員のコンディション把握のためのサーベイ、人事関連データ整備・活用の専門組織設置の取組)

(1)従業員のコンディション把握のためのサーベイの取組

株式会社サイバーエージェントでは、従業員数の増大に伴い、全ての従業員のコンディションの把握が困難になってきたという課題感から、調査(サーベイ)を行うシステムを平成25年に自社開発した。以降、現在に至るまで、毎月1回、全従業員に対してサーベイが実施されており、継続的にほとんどの従業員から回答を集めている。

サーベイは3問の質問と自由記載欄への回答で構成されており、3問のうち2問は自分のコンディションとチームのコンディションを直感的に5段階で回答する設問としている(この2問は毎回固定)。残り1問はその時々で重要と思われる事項に関する設問としている(例えば期首の時期には、「前半期、チームに対する貢献実感はあるか」という設問を入れる等)。率直な回答を得る観点から、回答結果は上司には共有しないこととしている。

従業員一人一人やチームのコンディションを把握することにフォーカスしていること、また、コンディションは短いスパンで上下すること等を踏まえ、同社では、例えば年1回で時間をかけて数十問のサーベイに取り組むのではなく、短時間で済むサーベイを高頻度で行うこととした(同社のサーベイは、「天気マーク」を直感的に選ぶものであり、自由記載欄に記入しない場合、約30秒で簡単に回答できる。)。サーベイ結果にはポジティブな内容もネガティブな内容も含まれるが、従業員の生の声をタイムリーに経営層に届ける観点から、気にかかる回答内容については、基本的に内容を改変せず、毎週の役員会に提出している。現在はコンディションを問うサーベイのほか、派生して、主としてハラスメント等のリスク管理サーベイ、目標管理サーベイ、管理職向けサーベイ、新卒従業員向けサーベイ等も行っている。サーベイへの回答の負担を考慮し、同一の従業員に複数のサーベイを送付することはしない等の運用の改善を常に行っている。

(2)サーベイのデータを整備・活用する専門部隊の設置

同社では、①事業拡大に伴う従業員数の増加、②働き方改革など組織ガバナンス強化の必要性の増加、③人的資本経営の加速等を背景に、特に近年、人事データ活用のニーズが高まっていた。そこで、人事関連データの整備や活用を担う「人事データ統括部」を人事本部内に設けることとした。さらに同社は、人事データ統括部とは別に、いわば社内ヘッドハンターのような専門組織も設けている。同組織は、同社が目指す「芸術的な適材適所」(※)を実現するため、サーベイで得られた情報等を基に、従業員のキャリア形成相談へのきめ細かい対応を行う一方で、事業動向を把握し、優先的に充当が必要なポジションを常にリストアップしている。このように、従業員、事業の両方の視点から、一般的に難易度の高い事業部間での異動コーディネート等も含めた全社横断での適材適所の取組を行っている。

  • ※同社において「社員ひとりひとりの才能やウィル、全社視点で優先的に埋めるべきポジション、両者を常に捕捉し、それらを最大公約数となるように掛け合わせることで、業績に貢献するような人材配置を行うこと」と定義。
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