第1編 人事行政

第1部 人事行政この1年の主な動き

Ⅰ  新時代における公務人材マネジメントの実現に向けて
  ~人事行政諮問会議~

第2章 公務員人事管理における主な課題の取組状況

第1節 多様で有為な人材の確保

 国家公務員の志望者の減少が続く中、「一般職試験(大卒程度試験)における『教養区分』の新設」等、令和4年度から取り組んでいる採用試験の改革を引き続き進めた。

 令和9年度からのCBT方式の段階的導入を目指し、令和8年度にプレテストを実施することとし、そのために必要となる問題バンクの構築やプレテストの実施に向けた準備を進めた。

 民間人材等の積極的な誘致の観点から、募集から定着までの各段階における必要な取組や参考となるノウハウ・事例などを取りまとめた体系的なガイドを作成し、提供した。

 民間人材等を係長級の官職に採用するため、経験者採用試験において、主に政策・事業の実施等を担う職員として採用する府省合同試験を新設した。

1 採用手法の更なる見直し

(1)総合職試験の「教養区分」の年2回実施

総合職試験(大卒程度試験)のうち専門分野に関係なく受験できる「教養区分」については、申込者数が堅調に推移し、総合職試験からの採用者全体に占める同試験区分の採用者の割合も年々高まってきている。

こうした状況を踏まえ、令和5年度の試験から、同試験区分を大学2年生の秋から受験できるよう受験可能年齢を1歳引き下げて「19歳以上」とし、第1次試験の試験地を全国に拡充するなどの措置を行ってきた。令和8年からは、同試験区分の受験機会の更なる拡大のため、現行の秋の実施に加えて春にも実施することで、年に2回受験することを可能とするよう措置した。

(2)一般職試験における「教養区分」の新設

一般職試験(大卒程度試験)については、過去10年間で申込者数が約3割減少しており、各府省は事務系、技術系を問わず採用に苦慮している状況にある。

こうした状況を踏まえ、地方公共団体や民間企業とも併願しやすくし、より多くの受験者を誘致することができるよう、専門試験に代えて、より判断力・思考力等を検証する試験内容とする「教養区分」を令和7年度より新設するべく、人事院規則等の改正を行った。同試験区分は、民間企業の採用活動の早期化にも対応していくため、受験可能年齢を一般職試験(大卒程度試験)の他の試験区分よりも1 歳低い「20歳以上」とし、大学3年生の受験も可能とした。

このほか、同試験区分の新設やその特徴が受験者層に広く認知されるよう、大学等ガイダンスをはじめとする人材確保活動の場面でPR活動を展開した。

(3)CBTの段階的導入など

採用試験における受験者の利便性の向上や受験機会の拡大を図るため、令和9年度からのCBT方式の段階的導入を目指し、令和8年度にプレテスト(模擬受験者を対象とする試行試験)を実施することとしている。そのために必要となる問題バンク(あらかじめ難易度が判明している問題を多数蓄積したもの)の構築やプレテストの実施に向けた準備を進めた。なお、「CBT」(Computer Based Testing)とは「コンピュータ上で実施される試験」のことを言い、テストセンターに設置された端末に対して配信される問題を受験者がオンラインで解答する方式を想定している。

また、既に一部開始している採用試験実施における試験係官への人材派遣の活用の拡大に取り組んだ。

(4)公務の魅力の発信

国家公務員の志望者拡大のためには、公務の魅力を高める取組に合わせて、学生等へ公務の魅力が十分に伝わることも重要である。情報発信の現状については、令和5年度に実施した有識者との意見交換では、世間に広がっているネガティブな情報の量や印象の強さに比して、その反証やポジティブな面、キャリアの見通しといった情報の量の不足・解像度の低さ・受け手による情報格差といった問題がある等の指摘があったところである。

こうした指摘を踏まえて、公務の魅力の発信に当たっては、学生の最終的な就職先としての意思決定に資するよう、就職先候補としての公務の認知から採用試験の受験に至るまでの学生の意思決定の各段階に応じて、適切な情報をより効果的なタイミングで発信すること等を念頭に取組を進めている。

2 民間企業などからの多様な人材の積極的誘致

(1)民間人材等の採用に関する募集から採用を経て定着するまでの一貫した支援

現下の行政課題の複雑・高度化に加え、公務における若年退職者の増加に対応するため、民間企業等における多様な経験や専門性を有する人材をより一層公務に誘致し、確保することが不可欠である。これらの採用者が各府省の職場や業務の遂行などに早期に適応し、その能力や知見を存分に発揮できるようにするためには、各府省における募集から採用プロセスを経て採用後の適応・定着までの一貫した取組が必要である。

そのため、募集から定着までの各段階における必要な取組や参考となるノウハウ・事例などを取りまとめた体系的なガイドを作成し、各府省に提供した。また、採用後の適応・定着において各府省が活用できる汎用的な研修教材等を作成した。

(2)経験者採用試験の拡大

各府省において実務の中核を担う係長級の層の職員が少なくなってきていることなどにより、係長級の官職への民間人材等の採用を促進する必要性が増している。

従来より、政策の企画・立案等を担う係長級の職員を採用するため、府省合同の「経験者採用試験(係長級(事務))」を実施してきた。これに加えて、地方機関等を含めた各府省において政策・事業の実施等を担う係長級の職員を採用するための府省合同試験を令和7年度から新設することとするため、人事院公示の改正等を行った。

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