第1編 人事行政

第1部 人事行政この1年の主な動き

Ⅰ  新時代における公務人材マネジメントの実現に向けて
  ~人事行政諮問会議~

第1章 適正な公務員給与の確保等(給与に関する勧告・報告)

 国会及び内閣に対し、①国公法に定める情勢適応の原則に基づき、官民の給与水準を均衡させるための月例給及び特別給の引上げ、②給与制度のアップデートとして、様々な側面から包括的な給与制度の見直しを行うこと等を内容とする報告及び勧告を行い、法改正を経て、勧告どおりの給与改定がなされた。

令和6年8月8日、国会及び内閣に対し、国公法に定める情勢適応の原則に基づき、公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させるため(民間準拠)、月例給及び特別給を引き上げるとともに、現下の人事管理上の重点課題に対応するため、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」(給与制度のアップデート)として、様々な側面から包括的な給与制度の見直しを行うこと等を内容とする報告及び勧告を行った。

内閣は、人事院勧告どおり給与改定を行うこと等を閣議決定し、「一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律」(令和6年法律第72号)が制定され、勧告どおりの給与改定がなされた。

1 令和6年の民間給与との較差等に基づく給与改定
(令和6年4月1日実施。寒冷地手当に係る支給地域の改定及び職員の居住地に関する要件の廃止は令和7年4月1日実施)

(1)月例給

民間と公務の令和6年4月分給与を調査し、主な給与決定要素を同じくする者同士を比較した結果、国家公務員給与が民間給与を平均11,183円(2.76%)下回っていたことから、初任給を始め若年層に特に重点を置きつつ、全職員について俸給表の引上げ改定を行った。

(2)特別給

直近1年間(令和5年8月~令和6年7月)の民間の支給割合と公務の年間の支給月数を比較した結果、国家公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(4.50月)が民間事業所の特別給の支給割合を0.10月分下回っていたことから、支給月数を0.10月分引き上げて4.60月分とし、引上げ分は民間の支給状況等を踏まえ、期末手当・勤勉手当に0.05月分ずつ均等に配分した。

(3)初任給調整手当及び委員、顧問、参与等の手当

医師の初任給調整手当や委員、顧問、参与等の手当について所要の改定を行った。

(4)寒冷地手当

民間における同種手当の支給額が、公務を11.3%上回っていたことから、寒冷地手当の月額を11.3%引き上げた。

また、新たな気象データ(「メッシュ平年値2020」(気象庁))が提供されたことから、当該データに基づき、支給地域の改定を行った。さらに、内閣総理大臣が定める官署に勤務する職員の寒冷地手当の支給について、職員の居住地に関する要件を廃止した。なお、今般の見直しに伴い支給地域から外れる地域等に引き続き勤務する職員に対し、所要の経過措置を講じた。

2 給与制度のアップデート

(令和7年4月1日実施。初任給や若年層の俸給月額の引上げは令和6年4月1日実施)

(1)俸給表及び俸給制度

ア 係員級(行政職俸給表(一)1級・2級相当)

採用市場における給与面での競争力向上を実現するため、民間における初任給の状況等を踏まえて初任給を大幅に引き上げ、一般職試験(高卒者試験)は188,000円、一般職試験(大卒程度試験)は220,000円、総合職試験(大卒程度試験)は230,000円とした。また、初任給の引上げを踏まえ、若年層の俸給月額を大幅に引き上げた(1級は平均11.1%、2級は平均7.6%の引上げ)。あわせて、昇給制度について、上位の昇給区分に決定できる職員の割合を引き上げた。

イ 係長級~本府省課長補佐級(行政職俸給表(一)3級~7級相当)

若手・中堅の優秀者層が早期に昇格した場合のメリットの拡大や民間人材等の採用時の給与改善を図るため、各級の初号近辺の号俸をカットし各級初号の俸給月額を引き上げた。また、昇給制度について、昇給区分を決定する際に役職段階に応じて設定される職員層の範囲を見直した。

ウ 本府省課室長級(行政職俸給表(一)8級~10級相当)

職員の役割の重さに見合った処遇を確保するため、職務や職責をより重視した俸給体系の整備を図ることとし、隣接する職務の級間での俸給月額の重なりを解消するとともに俸給表を簡素な号俸構成とした。また、昇格についてメリットがより大きくなるよう設定したほか、成績優秀者にはより一層の給与上昇を確保できるよう昇給制度を見直した。

(2)地域手当

ア 級地区分及び支給割合等

市町村単位で細かく支給割合を定めている仕組みについて、隣接市町村で不均衡が生じる等の意見があったことを踏まえ、級地区分の設定の大くくり化を図った。

具体的には、級地区分を設定する地域の単位は都道府県を基本とし、都道府県庁所在地及び人口20 万人以上の市については、民間賃金に違いがある場合は都道府県より高い級地区分を個別に設定することとした。また、級地区分を5区分に削減して再編成し、支給割合も4~20%の4ポイントの等間隔とした。

その上で、「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)のデータに基づく指定基準により最新の民間賃金の状況を反映して支給地域の級地区分を見直した。ただし、支給割合が引下げとなる市町村は低下幅が4ポイントを超えない級地区分とした。また、給割合の引下げは1年ごとに1ポイントとし、支給割合の引上げも段階的に行うこととした。

なお、地域手当の見直しは、これまで10年ごととしてきたが、今後はより短期間で行うこととし、また、支給割合の差の在り方について今後とも検討していくこととした。

イ 異動保障

全国各地での行政サービスの提供体制を維持するため、異動保障の期間を異動等から3年間とし、3年目の支給割合は異動等前の支給割合の60%とした(令和7年4月1日以降の異動等から適用)。

(3)その他の月例手当等

ア 扶養手当

配偶者の働き方に中立な制度への見直しの取組や官民における配偶者に係る手当の状況を踏まえ、配偶者に係る手当を廃止した。その上で、我が国全体としての少子化対策の推進等を踏まえ、子に係る手当を13,000円に引き上げた(2年間で段階実施)。

イ 通勤手当及び単身赴任手当

(ア)通勤手当の支給限度額

民間における手当の支給状況やライフスタイルの多様化への対応の必要性を踏まえ、手当の支給限度額を1か月当たり150,000円に引き上げ、その範囲内で新幹線等の特別料金も全額支給することとした。

(イ)新幹線等に係る通勤手当及び単身赴任手当の支給要件

民間人材等の採用促進等の変化に対応するため、採用に伴い新幹線通勤や単身赴任が生じた場合を手当の支給対象とした。あわせて、様々な事情を有する職員の勤務継続を可能とするため、新幹線等に係る通勤手当の支給要件を見直した。

ウ 管理職員特別勤務手当

管理職員が他律的な事由により深夜に及ぶ勤務を相当程度行う実態に応じた適切な処遇を確保するため、平日深夜に係る手当の支給対象時間帯を、午後10時から翌日の午前5時までに拡大した。また、指定職俸給表適用職員等も支給対象とした。

(4)特別給(ボーナス)

ア 勤勉手当の成績率等

特に高い業績を挙げた者に対してより高い水準の処遇が可能となるよう、「特に優秀」の成績区分の成績率の上限を平均支給月数の3倍に引き上げた。あわせて、各府省における実情に応じ「特に優秀」の成績区分の適用者を増やせるよう見直した。

イ 特定任期付職員のボーナス制度

専門人材について適時のタイミングで勤務成績を給与に反映し競争力のある年収水準を可能とするため、特定任期付職員のボーナスを、期末手当と人事評価の結果等に応じて支給される勤勉手当から成る構成に改め、特定任期付職員業績手当を廃止した。

(5)定年前再任用短時間勤務職員等の給与

人事運用の変化を踏まえ、異動の円滑化に資する手当として、地域手当の異動保障等、住居手当、特地勤務手当(同手当に準ずる手当を含む。)、寒冷地手当等を支給することとした(地域手当の異動保障及び特地勤務手当に準ずる手当については、令和7年4月1日以降の異動から適用)。

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