第1編 人事行政

第2部 「選ばれる」公務職場を目指した魅力向上・発信戦略
    ~働く場としての公務のブランディング~

第2章 公務職場の魅力の整理

第1節 公務内外のターゲットとなる人材が期待する価値

多様な行政ニーズに応え、複雑・高度化する行政課題に対応していくためには、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務する高い志と能力を持つ、多様で有為な人材を確保していく必要がある。このような人材から「選ばれる」公務職場となるためにはどのような魅力が必要なのか。これを確認するため、まずは、公務の採用対象となり得る人材が、働く場に対してどのような価値を期待しているのかについて、いくつかの民間調査等から確認する。

1 就職活動を行った大学生等が仕事に求める価値

「2025年新卒採用 大学生の就職活動に関する調査」(2024年11月28日株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)によれば、2025年新卒採用の就職活動を行った大学生・大学院生が仕事に求めることとして、「安定」、「貢献」、「金銭」、「成長」が上位に挙がっている(図2-1)。同調査では、「まず安定した環境を確保した上で、仕事を通じて貢献や成長をしていきたいという学生の考えがうかがえる」とされている。

なお、同調査を見ると、「チャレンジ」が2025年卒で再び第5位となり、2020年卒からの結果を見ると、「チャレンジ」を求める学生の割合は2025年卒が最も高くなっている。

2025年新卒採用 大学生の就職活動に関する調査「仕事に求めること」
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また、「2026年卒春期就職人気企業ランキング(1月~3月)」(2025年5月14日株式会社リーディングマーク)によれば、調査対象となる学生が企業の魅力として重要視する要素トップ10において、「将来的な高所得の見通し」に次いで、「企業の強い社会的責任感」、「チャレンジ性のある仕事」が挙げられている(図2-2)

学生が企業の魅力として重要視する要素トップ10

2 公務員志望者層が仕事に求める価値

「マイナビ2026年卒大学生公務員のイメージ調査」(2025年2月17日株式会社マイナビ)によれば、国家公務員・地方公務員を含めた「公務員」になりたい理由について、公務員を就職先として考えている人では、「安定している」、「休日がしっかりとれる」という項目に次いで、「社会的貢献度が高い」、「社会・市民のために働ける」が挙がっている(図2-3)。

「公務員」になりたい理由」
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国家公務員採用総合職試験等に合格して令和6年4月に採用された職員に対して行ったアンケート(総合職試験等からの新規採用職員に対するアンケート調査の結果(令和6年12月25日人事院))によると、国家公務員になろうとした主な理由は、「公共のために仕事ができる」、「仕事にやりがいがある」、「スケールの大きい仕事ができる」が上位となっている(図2-4)。

総合職試験等からの新規採用職員に対するアンケート調査の結果
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3 転職市場における公務員志望者が仕事に求める価値

「ビジネスパーソン6500人に聞いた「官公庁・自治体への転職」意識調査」(2025年1月6日エン・ジャパン『エン転職』『AMBI』『ミドルの転職』3サイト合同調査)を見ると、「官公庁・自治体への転職に興味がある」と回答した者が興味を持つ理由の上位は「安定した収入を得たいから」、「仕事を通じて社会貢献をしたいから」となっている(図2-5)。

「官公庁・自治体への転職に興味がある」と回答した者が興味を持つ理由
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4 現役職員が仕事に求める価値

内閣官房内閣人事局が実施した「国家公務員の働き方改革職員アンケート」の令和5年度の結果によれば、国家公務員の働きがいと関連している割合が高いものは、高い順に「成長を実感できている」、「国民・社会に貢献していると実感できている」となっている(図2-6)。

なお、同アンケート結果では、数年以内に離職意向を有する職員について、その要因を見ると、「自分にとって満足できるキャリア形成ができる展望がない」に次いで「成長実感が得られない」が高くなっている。現役職員については、「成長実感」の有無は、働きがいと離職意向の双方に関連があると言える。

令和5年度国家公務員の働き方改革職員アンケート結果
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なお、令和2年度人事院年次報告書第1編第2部において調査結果を報告した「公務職場に関する意識調査」においても「挑戦しがいのある仕事を通じて成長実感を得ることは、仕事のやりがいを感じることにつながり、さらに仕事のやりがいを感じることで新たな仕事にチャレンジするという好循環を生む」と分析している。また、「国民や社会への奉仕は、国家公務員の存在意義でもある。(中略)多くの職員が、政策の立案や行政サービスの提供、国民の保護など自身の所属する府省庁の所管業務が社会への貢献や国民への奉仕につながると感じていることがうかがえる。」としている。


以上を踏まえると、公務内外のターゲットとなる人材が「働く場」に求めるものは、大きく分けて、社会貢献性、成長の機会、処遇の3点にあると言える。

この観点を踏まえつつ、次に競合する民間企業等が提供する価値を見ていく。

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