職員の勤務時間・休暇等は、職員の基本的な勤務条件であり、国公法第28条の情勢適応の原則の適用を受けて、勤務時間法において具体的事項が定められている。人事院は、同法の実施の責めに任ずることとされており、規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)等を制定するとともに、実際に制度の運用に当たる各府省と協力して、職員の適正な勤務条件の確保に努めている。
なお、職員の勤務時間・休暇等の変更に関しては、勤務時間法において、人事院は勤務時間・休暇等の制度に関する調査研究を行い、その結果を国会及び内閣に報告するとともに、必要に応じ、適当と認める改定を勧告することとされている。
1 超過勤務・年次休暇の使用の状況
職員の勤務時間は、原則として1日7時間45分、週38時間45分とされているが、公務のため臨時又は緊急の必要がある場合には、超過勤務を命ずることができる。超過勤務の状況について、令和6年国家公務員給与等実態調査によると、令和5年の年間総超過勤務時間数は、全府省平均で230時間であった。これを組織区分別に見ると、本府省では382時間、本府省以外では194時間であった。また、超過勤務時間が年360時間以下の職員の割合を見ると78.3%であった。
また、国家公務員の超過勤務については、規則15-14により、超過勤務を命ずることができる上限を設定している。ただし、大規模災害への対処等の重要な業務であって特に緊急に処理することを要する業務に従事する職員に対しては、上限を超えて超過勤務を命ずることができる。令和5年度の超過勤務の上限を超えた職員の状況は、表5のとおりである。

上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合(1)他律部署のCSVファイルはこちら
上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合(2)自律部署のCSVファイルはこちら
職員の年次休暇は、原則として1年につき20日とされ、令和6年国家公務員給与等実態調査によると、令和5年の1人当たり平均使用日数は16.2日であり、組織区分別に見ると、本府省では14.4日、本府省以外では16.6日となっていた。
2 勤務時間・休暇制度等に関する調査研究
(1)公務における勤務時間・休暇制度等運用状況調査
公務における勤務時間・休暇制度等の適正な運用を図るとともに、これら制度の検討に資するため、国の官署を対象に、勤務時間、休暇、育児休業等に関する諸項目について、その運用状況の調査を実施している。
令和6年度は、各地方事務局(所)において、42官署について調査し、各官署における勤務時間・休暇制度等の運用実態を把握するとともに、これら制度に関する意見・要望の聴取等を行った。
調査の結果、全体的にはおおむね良好に処理されていると認められたものの、一部に法規の理解不足等に起因する誤りが認められたので、その是正の確保を図るため、必要な指導を行った。
令和5年度までの調査結果については、誤りやすい事例や特に注意を要する不適正事例を各府省に示し、勤務時間・休暇制度等の適正な運用の徹底を図った。
また、第1部Ⅱ第2章第3節3(1)に記載した勤務時間の管理等に関する調査も勤務時間・休暇制度等運用状況調査として実施している。
令和6年度に実施した調査では、対象となる職員ごとに客観的に記録された在庁時間と超過勤務時間を突合し、大きなかい離があればその理由を確認するなどして、客観的な記録を基礎とした超過勤務時間の適正な管理等について指導を行った。具体的には、本府省の20機関及び地方の4官署を直接訪問して調査を実施し、合計で約1,800人の直近1月分の在庁時間と超過勤務時間のデータを突合した。その結果、超過勤務時間はおおむね適正に管理されていたものの、一部で超過勤務時間が適正に記録されていない事例があり必要な指導を行った。その後、該当府省において適切な対応がなされ、超過勤務手当の追給や返納などが行われた。さらに、他律部署・特例業務の範囲を必要最小限のものとするとともに、月100時間等の超過勤務の上限を超える職員数を減らすよう指導を行ったほか、管理職員のマネジメントに関する助言等を行った。
(2)民間企業の勤務条件制度等調査
国家公務員の勤務条件の諸制度を検討するための基礎資料を得ることを目的として、毎年、「民間企業の勤務条件制度等調査」を行っている。
令和5年の調査は、全国に所在する企業規模50人以上の企業のうち、無作為に抽出した7,532社を対象として、令和5年10月1日現在における労働条件等の諸制度について調査を実施した。また、調査の回答は、全ての調査項目についてオンライン調査システムを利用した回答も可能とした。
令和5年の調査では、健康管理制度に関し、従業員に対し、子宮頸がん検診及び乳がん検診を実施している企業の割合等について調査を行った。