第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第2章 働き方改革と勤務環境の整備

1 仕事と家庭の両立支援の充実

(1)勧告及び意見の申出

平成28年8月8日、人事院は、民間労働法制において育児・介護休業法等の改正が行われたこと、公務においても、適切な公務運営を確保しつつ、働きながら育児や介護がしやすい環境整備を進めていくことが必要となっていること等を踏まえ、国会及び内閣に対し、育児休業法の改正についての意見の申出及び勤務時間法の改正についての勧告を行った。その内容は、民間労働法制の改正に即した措置が確保されるよう、仕事と育児や介護との両立支援制度の見直しを行うものであり、概要は以下のとおりである。

ア 介護休暇の分割

介護休暇を請求できる期間については、要介護状態ごとに連続する6月の期間内とされているが、3回まで分割できるようにするために、介護休暇を請求できる期間を「指定期間」とし、指定期間は、各省各庁の長が、規則の定めるところにより、職員の申出に基づき要介護状態ごとに3回以下、通算6月以下の範囲内で指定するものとする。

イ 介護時間の新設

日常的な介護ニーズに対応するため、各省各庁の長が、職員が要介護者を介護するため1日の勤務時間の一部について勤務しないことが相当であると認められる場合に、連続する3年の期間内において、介護のため1日につき2時間を超えない範囲内で勤務しないこと(介護時間)を承認できるよう措置する。

介護時間の承認を受けて勤務しなかった時間は無給とするものの、昇給区分の決定に当たっては、介護時間の承認を受けて勤務しなかったことにより自動的に下位の昇給区分に決定されることがないよう、当該勤務しなかった時間を「勤務していない日数」として取り扱わないこととするとともに、勤勉手当の期間率の算定に当たっては、介護時間の承認を受けて勤務しなかった時間を日に換算して30日に達するまでの期間を勤務期間から除算しないこととする。あわせて、昇給制度における介護休暇及び育児休業の取扱い並びに勤勉手当における育児時間の取扱いについても、同様の取扱いとする。

ウ 育児休業等に係る子の範囲の拡大

育児休業、育児短時間勤務及び育児時間並びに育児のためのフレックスタイム制の特例の対象となる「子」の範囲について、法律上の子(実子及び養子)に加え、①職員が特別養子縁組の成立に係る監護を行う者、②養子縁組里親である職員に委託されている者、③その他これらに準ずる者として規則で定める者といった法律上の子に準ずる関係にある者を含める。

エ その他(規則等の改正)

民間労働法制の改正内容に即し、人事院において、①介護のための両立支援制度の対象家族について、祖父母、孫及び兄弟姉妹の同居要件を撤廃すること、②介護を行う職員の超過勤務の免除を措置すること、③上司・同僚からの妊娠、出産、育児休業・介護休暇等の利用等に関する言動によって職員の勤務環境が害されることを防止するための体制整備等を講ずること、④非常勤職員の育児休業及び介護休暇の取得要件を緩和すること等の措置を行う。

(2)育児休業法及び勤務時間法の改正等

ア 勧告の取扱い

人事院の勧告及び意見の申出に基づき、「一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案」が平成28年10月14日に閣議決定され、同日、第192回国会に提出された。同法案は国会での審議を経て、平成28年11月16日に可決・成立した。同法は、同月24日に公布され、平成29年1月1日に施行された。

イ 規則の改正等

人事院は、指定期間の指定手続、介護時間制度の新設に伴う給与の取扱い等、育児休業法、勤務時間法等において規則に委任されている事項を定め、かつ、非常勤職員の育児休業及び介護休暇の取得要件の緩和、介護のための超過勤務の免除等の民間労働法制の改正内容に即した改正を行うため、規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)、規則15-15(非常勤職員の勤務時間及び休暇)、規則19-0(職員の育児休業等)等の一部を改正する規則を平成28年12月1日に公布し、平成29年1月1日から施行した。

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