第1編 人事行政

第3部 令和4年度業務状況

第1章 職員の任免

第2節 採用試験

1 2022年度における採用試験の実施

(1)採用試験の種類

人事院が試験機関として自ら実施した2022年度の採用試験は、29種類32回である。このほか、人事院の指定に基づき、外務省が試験機関として実施した外務省専門職員採用試験がある(表1-2)。

29種類の内訳は、①政策の企画及び立案又は調査及び研究に関する事務をその職務とする係員を採用する総合職試験(院卒者試験及び大卒程度試験の2種類)、②定型的な事務をその職務とする係員を採用する一般職試験(大卒程度試験、高卒者試験及び社会人試験(係員級)の3種類)、③特定の行政分野に係る専門的な知識を必要とする事務をその職務とする係員を採用する専門職試験(国税専門官採用試験、労働基準監督官採用試験等の16種類)、④民間企業における実務の経験その他これに類する経験を有する者を係長以上の官職へ採用する経験者採用試験(係長級(事務)等の8種類)である。

(2)採用試験の周知

人事院が試験機関として実施する2022年度の採用試験全体の施行計画については、令和4年2月1日に官報公告を行った後、各採用試験の詳細について、受験申込みの受付期間を考慮し、29種類32回の採用試験を5回に分けて官報により告知した。また、人事院のホームページなどで採用試験について情報提供を行うとともに、ポスター、採用試験の概要等の募集資料の掲示・配布を全国の大学、高等学校等に依頼し、積極的な採用試験の周知を図った。

国家公務員採用試験実施状況一覧2022年度1
国家公務員採用試験実施状況一覧2022年度2
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(3)採用試験の方法

採用試験は、受験者がそれぞれの試験の対象となる官職の職務を遂行する上で発揮することが求められる能力及び適性を有するかどうかを相対的に判定することを目的としている。

そのため、官職の職務遂行に求められる知識、技術、その他の能力及び適性を検証する方法として、基礎能力試験、専門試験、人物試験等の試験種目のうちから、それぞれの採用試験に効果的な試験種目を組み合わせて実施している。

例えば、総合職試験の大卒程度試験においては、国家公務員として必要な基礎的な知能及び知識をみるための「基礎能力試験」、必要な専門知識及び技術等をみるための「専門試験」、政策の企画立案に必要な能力、総合的な判断力及び思考力等をみるための「政策論文試験」をそれぞれ筆記試験により行い、さらに、人柄、対人的能力等をみるための「人物試験」を個別面接により行っている。また、総合職試験の院卒者試験では、「政策論文試験」に替えて、課題に対するグループ討議を通してプレゼンテーション能力やコミュニケーション力等をみるための「政策課題討議試験」を行っている。

こうした試験種目のうち、専門性の高い試験種目の内容については、試験専門委員として委嘱した大学の教員及び専門知識を有する各府省の職員等とともに検討を重ねた上で決定している。

また、採用試験の実施後は、その結果分析を通じて試験方法の検討を行うほか、必要に応じて各学校における教科内容の実態調査を実施するなど、採用試験の妥当性及び信頼性を高めるよう常に研究を行っている。

(4)実施状況

ア 概況

2022年度に実施した採用試験の状況は、表1-2に示したとおりである(資料1-1)。

2022年度についても新型コロナウイルス感染症に係る状況を踏まえ、試験の実施に当たっては、マスクの着用、試験室の換気、体調不良者への対応などをあらかじめホームページで注意喚起した上で、試験場においては、一定の距離を保った座席配置や手指消毒の実施のほか、人物試験等では飛沫防止のためのパーティションの設置など新型コロナウイルス感染症への対策を講じた。

総合職試験(院卒者試験)は、対象となる官職に必要とされる専門知識等に応じて従来の9の区分試験に加えて情報系の専門的な素養を持つ有為の人材をこれまで以上に確保するため、2022年度より、「デジタル」区分を新設して実施した。また、総合職試験(大卒程度試験)についても同様に従来の11区分に加えて「デジタル」区分を2022年度より新設して実施した。一般職試験(大卒程度試験)は従来の「電気・電子・情報」区分について、試験内容を見直した上で、「デジタル・電気・電子」区分に変更して10区分、法務省専門職員(人間科学)採用試験は7区分、労働基準監督官採用試験は2区分、一般職試験(高卒者試験)は4区分、一般職試験(社会人試験(係員級))は2区分、刑務官採用試験は6区分、入国警備官採用試験及び航空保安大学校学生採用試験は2区分、海上保安学校学生採用試験は5区分、国土交通省経験者採用試験(係長級(技術))は2区分の試験に分けて、それぞれ実施した(資料1-2-11-2-21-31-81-1012)。

さらに、一般職試験(大卒程度試験)のうち「行政」の区分試験、一般職試験(高卒者試験)のうち「事務」及び「技術」の区分試験、一般職試験(社会人試験(係員級))のうち「技術」の区分試験、刑務官採用試験及び税務職員採用試験については、合格者の地域的偏在を防ぎ、各地域に所在する官署からの採用に応じられるように、地域別の試験に分けて実施した(資料1-31-6-11-6-21-71-9)。

なお、令和4年9月18日に実施した刑務官採用試験の第1次試験において、台風の影響により九州の全試験地での実施を中止し、当該試験地での受験予定者を対象とした再実施試験を10月2日に行った。

全採用試験(外務省の実施する試験を含む。)の申込者総数は108,854人で、前年度に比べると756人(0.7%)減少した。このうち、大学・大学院卒業程度の試験は73,746人で、前年度に比べ3,075人(4.4%)増加した。また、高等学校卒業程度の試験は、35,108人で、前年度に比べ3,831人(9.8%)減少した。

全採用試験の合格者総数は24,642人で、前年度に比べ561人(2.3%)増加した。

申込者数が合格者数の何倍かを示す比率(以下「倍率」という。)は、表1-2のとおりである。その内訳は、大学・大学院卒業程度の試験が4.5倍(前年度4.4倍)、高等学校卒業程度の試験が4.3倍(前年度4.8倍)であった。

国家公務員採用試験申込者数(Ⅰ種・Ⅱ種・Ⅲ種(平成23年度まで)及び総合職・一般職(大卒・高卒))の推移
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イ 試験の種類別等の状況

(ア)総合職試験

① 表1-2のとおり春に実施した総合職試験の申込者数は、院卒者試験(法務区分を除く。以下①において同じ。)が1,656人で前年度に比べ145人(9.6%)の増加、大卒程度試験(教養区分を除く。以下①において同じ。)が13,674人で、875人(6.8%)の増加、全体では15,330人で1,020人(7.1%)の増加となった。

女性の申込者数は、院卒者試験が495人、大卒程度試験が5,821人、全体では6,316人となった。

合格者数は、院卒者試験が618人、大卒程度試験が1,255人で、全体では1,873人で前年度に比べ39人(2.1%)の増加となった。

女性の合格者数は、院卒者試験が176人、大卒程度試験が397人で、全体では573人となった。また、合格者に占める女性の割合は、院卒者試験が28.5%、大卒程度試験が31.6%で、全体では30.6%となった。

申込者数及び合格者数について、国・公・私立別の出身大学(大学院を含む。)別の割合でみると、それぞれ国立大学46.6%、66.6%、公立大学6.1%、4.2%、私立大学45.9%、28.4%、その他外国の大学等1.3%、0.9%であった(資料1-14)。

② 秋に実施した大卒程度試験「教養区分」の申込者数は2,952人で、前年度に比べ132人(4.3%)減少し、合格者数は255人で、前年度に比べ41人(19.2%)増加した。

女性の申込者数は1,162人で、前年度に比べ84人(6.7%)減少し、申込者全体に占める割合も39.4%で1.0ポイント低下した。女性の合格者数は87人で、前年度に比べ33人(61.1%)増加し、合格者に占める割合も34.1%で8.9ポイント上昇した。

また、院卒者試験「法務区分」の申込者数は13人で、前年度に比べ4人(23.5%)減少し、合格者数は9人となり、前年度に比べ1人(12.5%)の増加となった。女性の申込者数は3人、合格者数は2人であった。

(イ)一般職試験(大卒程度試験)

① 表1-2のとおり申込者数は28,103人で、前年度に比べ786人(2.9%)増加し、合格者数は8,156人で、前年度に比べ603人(8.0%)増加した。

女性の申込者数は11,612人で、前年度に比べ583人(5.3%)増加し、申込者全体に占める割合は41.3%で0.9ポイント上昇し、過去最高となった。また、女性の合格者数は3,271人で、前年度に比べ361人(12.4%)増加し、合格者に占める割合は40.1%で1.6ポイント増加した。

② 申込者及び合格者を学歴別にみると、大学卒業者等の占める割合は、申込者は90.0%で前年度に比べ0.1ポイント増加したが、合格者は90.0%で前年度に比べ0.2ポイント低下した。大学院修了者等の占める割合は、申込者は6.4%で前年度と同数となったが、合格者は7.4%で前年度に比べ0.1ポイント上昇した(資料1-15)。

③ 申込者数及び合格者数について、国・公・私立別の出身大学(大学院を含む。)別の割合でみると、それぞれ国立大学34.3%、47.2%、公立大学7.6%、8.8%、私立大学54.3%、41.3%、その他3.8%、2.7%であった(資料1-16)。

(ウ)一般職試験(高卒者試験)

① 表1-2のとおり申込者数は11,191人で、前年度に比べ1,779人(13.7%)減少したが、合格者数は3,333人となり、前年度に比べ215人(6.9%)増加した。

女性の申込者数は4,058人で、前年度に比べ341人(7.8%)減少したが、申込者全体に占める割合は36.3%で2.4ポイント上昇した。また、女性の合格者数は1,237人で、前年度に比べ121人(10.8%)増加し、合格者に占める割合は37.1%で1.3ポイント上昇した。

② 申込者及び合格者を学歴別にみると、高等学校卒業者等の占める割合は、申込者は47.4%で前年度に比べ1.9ポイント低下し、合格者は44.0%で前年度に比べ0.4ポイント低下した。専修学校卒業者等の占める割合は、申込者は49.1%で前年度に比べ1.4ポイント上昇し、合格者は53.8%で前年度に比べ0.5ポイント上昇した(資料1-17)。

(エ)経験者採用試験

2022年度は、8種類の経験者採用試験を実施した。

表1-2のとおり申込者数は1,922人で、前年度に比べ60人(3.0%)減少し、合格者数は153人で、前年度に比べ45人(22.7%)減少した。

女性の申込者数は515人で、前年度に比べ50人(10.8%)増加し、申込者全体に占める割合は26.8%で3.3ポイント上昇した。また、女性の合格者数は34人で、前年度に比べ6人(15.0%)減少したが、合格者に占める割合は22.2%で2.0ポイント上昇した。

(オ)点字等による試験の実施

① 点字による試験の実施は、総合職試験(大卒程度試験)の法律区分及び一般職試験(大卒程度試験)の行政区分を対象に措置することとしている。

また、視覚障害の程度によって、総合職試験、一般職試験、財務専門官採用試験、国税専門官採用試験、食品衛生監視員採用試験、労働基準監督官採用試験、税務職員採用試験及び気象大学校学生採用試験については、拡大文字による試験及び解答時間の延長等の措置を講じている。

② 2022年度においては、点字試験を希望する申込者はいなかった。

拡大文字による試験と解答時間の延長の両方の措置を希望する申込者は総合職試験(大卒程度試験)で2人、一般職試験(大卒程度試験)で1人であった。

また、拡大文字による試験を希望する申込者は総合職試験(院卒者試験)及び総合職試験(大卒程度試験)で各1人であった。

なお、以上のほか、身体の障害等がある受験者に対して、試験の公正な実施に支障を来さない範囲で、受験上の配慮として必要に応じ着席位置の変更等の措置を講じた。

ウ インターネットによる受験申込み

インターネットによる受験申込みは、受験申込みの利便性の向上及び行政事務の効率化を図る観点から、平成16年度に航空管制官採用試験及び航空保安大学校学生採用試験で導入し、順次、対象を広げ、平成24年度からは、全ての試験においてインターネットによる受験申込みを導入した。

2022年度におけるインターネットによる申込者の割合は99.9%(院卒者・大卒程度試験99.9%、高卒程度試験99.9%)であった。

エ 委託試験の適正な実施

2022年度においても、公正かつ適正な採用試験の実施の確保のため、試験実施事務等を当該試験により職員を採用する府省に委託して行っている試験(以下「委託試験」という。)に対する総合的支援策を実施した。

具体的には、当該府省が実施する事前研修への人事院職員の講師派遣、総合職試験第1次試験の試験係官に当該府省の職員を受け入れる実地研修を実施した。

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