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2 定年後の生活設計
▶ 生活設計の必要性 ▶ 生活設計の作成手順 ▶家庭の人間関係(▶ 配偶者 ▶ 子供 ▶ 親 ▶ 一人暮らし) ▶ 地域社会との関係
(3) 家庭の人間関係
定年後、自宅にいる時間が長くなると、家族の意外な素顔が見えてきたり、公務から離れた寂りょう感のようなものにさいなまれたりすることがあります。家族と良好な関係を築き、家庭を心の安らぎの場とするために、家庭の人間関係について考えてみましょう。
男性、女性とも定年後には、配偶者と過ごす時間がこれまでより増えてきます。現役の間、日中は、一方又は双方がほとんど家にいなかったのに、双方とも家にいることが多くなります。そうなると、当然、配偶者にとっても大きな変化が生じます。
例えば定年後の男性については、配偶者が出かけようとするとワシも行くといった「ワシも族」、自分が出かけるときに配偶者にお前もこいと強いる「お前も族」のように、男性配偶者が毎日家にいることを原因とした「夫源病」や「主人在宅ストレス症候群」などと呼ばれる現象が近年増えています。また、低粘度の女性についても、在宅時間の拡大に伴い、男性配偶者に予期せぬ影響を及ぼす可能性もあります。
そうならないためにも、お互いに趣味を持って別々の時間を過ごしたり、たまには外食したり、お互い相手の立場を尊重しつつ、協力して充実した家庭生活を送れるようにしたいものです。
そして、もう長い間一緒にいるんだから当然わかっているはず、などと安易に考えず、相手に伝わる言葉で話すことが大事です。
【心配ごとや悩みごとの相談相手】
平成24年度に内閣府が実施した「高齢者の健康に関する意識調査」(55歳以上の者を対象に調査(複数回答))によると、「心配ごとや悩みごとの相談相手」については、「配偶者」が最も多く、以下、「子ども」、「友人・知人」、「その他の家族・親族」と続いています。
性別でみると、「配偶者」(男性68.3%、女性48.1%)は男性の方が高く、「子ども」(男性33.6%、女性58.6%)や「友人・知人」(男性20.2%、女性30.4%)は女性の方が高くなっています。
イ 子供との関係
定年を迎えるころの子供は、社会人として自立していたり、まだ学生であったりと様々だと思います。子供がどのような状況であれ、親として子供に経済的支援をしたくなる気持ちは理解できますが、現実問題として、定年後は経済的にも厳しい状況になっていきます。
定年を契機に、子供の状況に応じた互いの今後について話し合ってみてはいかがでしょうか(子供の自立、経済的支援、自身の介護、など)。
より高齢な親は、日常の何でもないことと思われることが原因で、心身に変調を来す場合が結構見受けられるものです。普段から頻繁に親とのコミュニケーションを図ることを心掛けていれば、親の体調の変化なども早期に発見でき、迅速な対応につながるほか、親の心の支えになることができます。遠方に住んでいる親に対する配慮も必要になってきます。
また、親の介護は、その加齢とともに家族の負担が増えていくのが一般的です。介護期間が長くなると、次第に介護者の心身に負担が蓄積して、介護者自身が健康を害したり、家族の人間関係が崩れたりすることにもなりかねません。介護は、介護を受ける親や家族にとってどのような介護を行うのが一番適切なのかについて、家族全員の協力体制のもとで、それぞれが強く当事者意識を持って相談しながら決めることが大切です。
介護は親のみの問題ではありません。皆さん自身の将来の問題でもあります。介護が必要になったときに慌てることがないように、市町村の窓口に足を運び、介護保険制度を含む様々な介護情報を早めに入手したり、誰が、どこで、どのように費用を負担して介護するかなどについて、家族全員で十分話し合っておくことが大切です。
介護の必要性が生じた場合には、地域における介護相談の最初の窓口である「地域包括支援センター」に行ってみましょう。
(参考)厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)
▶【介護が必要になった場合の介護を依頼したい人】
全国の55歳以上の男女を対象とした内閣府の調査(令和4年)で介護を頼みたい人について聞いたところ、男性の場合は「配偶者」が50.8%、女性の場合は「ヘルパーなど介護サービスの人」が58.0%と最も多くなっています。
介護が必要になった場合の介護費用については、「年金等の収入でまかなう」が63.8%、「貯蓄でまかなう」が18.3%、「子などの家族・親戚からの経済的な援助を受けることになると思う」が4.3%、「収入や貯蓄ではまかなえないが、資産を売却するなどして自分でまかなう」が3.1%、「特に考えていない」が8.3%となっています。また、男女別に比較してみると、「年金等の収入でまかなう」の回答は、どの年齢層でも女性より男性の方が高くなっています。
▶【どこでどのような介護を受けたいか】
厚生労働省の「高齢社会に関する意識調査」(全国の40歳以上の男女を対象)によると、自分の介護が必要となった場合に、どこでどのような介護を受けたいかの希望についてみると、自宅で介護を受けたいと回答した人の割合(「自宅で家族中心に介護を受けたい」、「自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けたい」、「家族に依存せずに生活ができるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい」と回答した者の割合の計)は全体で73.5%となっています。
また、男女別にみると、男女ともに「家族に依存せずに生活ができるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい」と回答した者の割合が最も高くなっていますが、男性は「自宅で家族中心に介護を受けたい」と回答した者の割合が24.0%と女性(13.9%)より高くなっています。
エ 一人暮らしの場合
平均寿命が年々延びていることもあり、一人暮らしの高齢者は今後ますます増加すると予想されています。現在、一人暮らしをしている人だけではなく、配偶者や子供、親などの家族と暮らしている人であっても、今後、一人暮らしを余儀なくされる場合が出てきます。一人暮らしは、日々の生活において制約が少ない、人生における様々な選択の可能性が高いなどのメリットがある反面、病気やけがなど、万が一の場合への対策を常に考えておく必要があります。
一人暮らしであっても、親との関わり、兄弟との関わりなど、家族とのつながりを大切にするほか、身近な居住地域との関わりを意識し、円滑な人間関係を保持することが大切です。
▶【一人暮らし高齢者は増加しています】
65歳以上の一人暮らし高齢者の増加は男女ともに増加傾向にあり、昭和55年には65歳以上の男女それぞれの人口に占める割合は、男性4.3%、女性11.2%でしがたが、令和2年には男性15.0%、女性22.1%となり、令和32年には男性26.1%、女性29.3%となると見込まれています。
▶【一人暮らし高齢者の意識】
厚生労働省の「高齢社会に関する意識調査」(全国の40歳以上の男女を対象)によると、老後に一人暮らしをすることになった場合に不安はありますかとの設問に対し、8割超が不安を感じていると回答しています。その不安は具体的にどのようなことかとの設問に対して、「病気になったときのこと」(79.7%)、「寝たきりや身体が不自由になり、介護が必要になったときのこと」(79.1%)と回答しています。続いて「買い物などの日常生活のこと」「日常会話をする相手がいないこと」となっています。
なお、 当該調査では、年齢が低い方が「病気になったときのこと」を挙げる割合が高く、年齢が高いほど「買い物など日常生活のこと」「日常会話をする相手がいないこと」を挙げる割合が高くなっています。
コラム 【定年後の居場所づくり】
定年後、仕事から離れると自由時間が増えます。先人の伝記を読むと、引退後の時間を利用して、念願のライフワークに打ち込んだという例が多数あり、励まされます。一方、多くの退職者が、特にやる事もなく、ひとりで喫茶店や図書館で時間を潰しているという報告もあります。
今まで多くの時間を過ごした職場という行き場が無くなり、「家庭回帰」しようと思う人も多いでしょう。ただ、家族は既に自分の生活様式や人間関係を確立していて、自分が入り込む余地があまりなかった、ということもあるようです。また、定年後の人間関係を配偶者(特に妻)だけに依存していて、死別したときに孤立してしまうという話も聞きます。
退職後を展望して、職場でも、家庭でもない、第三の自分の居場所づくりを意識することが必要となります。ひとりで自然の中で過ごすといった例外もありますが、居場所づくりと人間関係は切り離せない場合がほとんどです。例えば、スポーツや趣味の同好の士、社会貢献や市民活動のグループ、一緒に何かを学んだり研究する仲間などの、地縁を越えた人的ネットワークです。
定年になって暇ができたら居場所づくりを始めよう、と思っている人もいるかもしれません。しかし、人間関係は一朝一夕ではできません。また、スポーツや趣味を仲間と楽しむには、ある程度熟達するための時間が必要です。本格的に活動するのは定年後にするにしても、現役のうちから少しずつ居場所づくりをしておくことが必要です。もし、そのような居場所が複数あれば、事情の変化にも対応しやすく、更によいでしょう。
この機会に、定年後の居場所づくりについて考えてみてはいかがでしょう。
・楠木新「定年後 50歳からの生き方、終わり方」(2017年、中央公論新社)
⇒定年後の現実と生き方のヒント
・上野千鶴子「男おひとりさま道」(2012年、文藝春秋)
⇒女性との比較で男性の居場所について考察
・足立則夫「遅咲きのひと」(2005年、日本経済新聞出版) ※絶版で新刊購入不可
⇒晩年に念願の活動で花開いた人達の伝記を多数収録
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