2 定年後の生活設計

生活設計の必要性 ▶ 生活設計の作成手順 ▶ 家庭の人間関係 ▶ 地域社会との関係

(2) 生活設計の作成手順
定年後の生活設計の作成手順を図示すると次のようになります。

< 現状分析 ⇒ 定年時の状況想定 ⇒ 身の振り方の決定 ⇒ 設計立案 ⇒ 設計検証 >

この手順を参考に、家族、特に配偶者と相談しながら、定年後の充実した生活(健康、家族、家計、生きがい、趣味、友人など)の実現を目的として、これまでの自分の人生に向き合い、今後の生活設計について考えてみてください。

設計を検証した後は、それに基づいた準備行動に移り、行動の結果を踏まえてその都度設計を修正していくことになります。

次に掲げる事項について客観的に自己分析を行い、その結果を配偶者など家族とともに検討してください。

ア 現状分析及び定年時の状況想定

例えば、下記の事項について、現状はどうか分析し、60歳時、定年時、公的年金支給開始時はどうなっているかを想定してみます。特に、家族の状況や住宅ローンの返済状況などについては、具体的に分析・想定する必要があります。

(ア)就業状況
(イ)自分自身や家族の健康状態
(ウ)家族の状況(配偶者の就業、子供の自立、両親の介護など)
(エ)家計や住居の状況(月々の家計項目ごとの収支、ローンの返済、修繕の必要性等)
(オ)貯蓄、個人年金などの状況
(カ)生きがい、自身がやりたいことの確認及びその実現度
(キ)その他(各人が必要と考える事項)

イ 身の振り方の決定
「定年時等の状況想定」に基づき、まず、給与水準が減少局面を迎える60歳から公的年金が支給される65歳までをいかに過ごすかを念頭に、60歳後の身の振り方を決めます。その選択肢は、就業状況を基準とすると、おおむね次の3つが考えられます。

(ア)フルタイムで就業する
(イ)勤務時間又は勤務日などを軽減して就業する
(ウ)就業しない

ウ 設計立案
身の振り方については、定年直後から時間的経過により変化していくものですから、次のように時期を分けて決定すると良いでしょう。

(ア)前期:例えば、60歳台前半では、健康に問題はなく、フルタイムで仕事をすることを前提に計画
(イ)中期:例えば、60歳台後半から70歳台では、健康には大きな問題がないが、仕事には就かないことを前提に計画
(ウ)後期:例えば、80歳台以上では健康に問題を抱え、家にいることが多くなることを前提に計画

これを前提にして、上記「現状分析及び定年時の状況想定」の各項目ごとに、これまでの自分を振り返りながら、これから自分は何をやりたいのか、家族との関係でこれから自分がやるべきことは何か、いつから何をし始めるのかなどを明確にし、設計を考えていきます。なお、準備行動の設計に当たっては、実践がおざなりにならないよう、必ず始点と終点を設けるようにします。

エ 設計検証
立案された定年後の生活設計が適切であるか否かを、次に掲げる事項に留意しつつ、実現可能か、本当に充実感を得られる生活設計になっているかという観点から、改めて検証してください。

(ア)設計自体に余裕があるか(準備期間、個々の設計事項の時間配分など)
(イ)個々の設計事項に係る前期、中期、後期という期間設定は適当か
(ウ)生活水準の設定は妥当か(収支予測に無理はないか)
(エ)健康状況を適切に考慮しているか(気力、体力などの衰えを考慮したものか)
(オ)本当に自分自身のやりたいことか
(カ)家族の状況の変化などを十分考慮した設計になっているか
(キ)生活環境の変化などに応じて変更することができる設計か
(ク)配偶者などの家族の意見も反映された設計か
(ケ)その他(各人が必要と考える事項)

皆さんには、定年退職するまでの生活において、自己及び家庭を犠牲にすることを強いられるようなことがあったと思いますが、定年後は、「自分自身と家族を大切にする」という観点から、生活を充実させることを是非考えてみてください。


コラム 【どこに住むか?】

定年後の生活設計を考える上で欠かせないのが「どこに住むか」ということです。

公務員宿舎住まいであれば、新たな住居を探さなければなりません。すでに住む家があっても、退職によって生活パターンが変わったり、子供が独立して親元を離れることなどを契機に引越しを検討することもあるでしょう。

最近は、定年後は住み慣れた地域を離れて地方でのんびりと暮らしたい、気候が温暖で物価が安い海外に、移住や長期滞在(ロングステイ)したいという方もいるようです。そのような場合、これまでとは異なる環境において生活することになるわけですから、雑誌やホームページで情報を収集するほか、主に退職者を対象にして住宅情報を提供する地方公共団体、海外移住やロングステイをサポートする団体もありますので、事前に十分に調べ、まずは短期間住んでみるなどの慎重さが必要です。

退職後の住居を考える際の一つのポイントは、「何を生活の中心とするか」です。

在職中には、仕事が生活の中心であった方が多いと思いますが、退職後は、どのような活動を中心に生活を組み立てようとお考えですか。家族と一緒に過ごす時間、趣味、ボランティア活動など、何を中心に生活をされますか。そうした活動に適しているのは、都会ですか、地方ですか、一戸建てですか、マンションですか…。

退職後の生活といっても、何十年と長期にわたります。退職直後と20年後では、ご自身の健康、家族の状況、収入、為替レート・物価(海外の場合)など、様々な面で異なるでしょう。退職後の住居を考える際には、そうした長期的な視点から将来の変化を考慮し、家族(特に配偶者)とよく相談した上で、お互い納得してどこに住むかを決めることが不可欠です。

※現在、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、海外への渡航、移住等が制限されていることに注意してください。


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