第3章 定年後の収入と支出

1 退職手当制度の概要

退職手当の支給 (算定式基本額基本額の特例調整額
退職手当の計算例  ▶ 退職手当に係る税金  ▶ 退職手当手取額計算書
 

(1) 退職手当の支給

退職手当は、勤続報償、生活保障、賃金後払いの要素をそれぞれ有しているが、基本的には職員が長期間継続勤務して退職する場合の勤続報償としての要素が強いものと理解されており、国家公務員退職手当法(以下「退手法」といいます。)に基づいて支給されます。
   
ただし、次のいずれかに該当する場合には、退職手当の全部又は一部が支給されないか、支給後であっても返納を求めることができるとされています。

ア 懲戒免職等処分を受けて退職した場合(退手法第12条第1項第1号)

イ 失職した場合(同法第12条第1項第2号)

ウ 在職期間中の非違行為に係る刑事事件に関し、退職後に禁錮以上の刑に処せられた場合(同法第14条、第15条及び第17条)
※ 支給後に禁錮以上の刑に処せられた後、返納を求められる前に死亡したときは、相続人に対して返納を求められることがあります。

エ  退職後に、在職期間中の非違行為が発覚し、それが懲戒免職等処分相当の行為であると認められた場合(同法第14条から第17条まで)
※すでに職員が死亡しているときには、遺族等に対して支給がされないか返納が求められることがあります。

また、職員が死亡した場合で次に該当する遺族は、退職手当を受け取ることができません。

  • 職員を故意に死亡させた者(同法第2条の2第4項第1号)
  • 職員の死亡前に、当該職員の死亡によって退職手当の支給を受けることができる先順位又は同順位の遺族となるべき者を故意に死亡させた者(同法第2条の2第4項第2号)
定年の65歳への引上げ(「第1章1(2)定年段階的引上げ開始以後の制度」参照)に伴い、令和5年4月1日以降、退職手当については、以下の措置(以下、現行定年が60歳の職員の場合)が講じられます。

① 60歳に達した日以後、その者の非違によることなく退職した者の退職手当の基本額については、当分の間、退職事由を定年退職として算定することとする。(下記(3)イ関係)
②  早期退職募集に応募し、認定を受けて退職する場合の俸給月額の割増率は、当分の間、現行定年下で対象とされる年齢と割増率を維持する。(60歳~64歳の者が応募認定退職する場合は俸給月額は割増されない。)(下記(4)ア関係)
③  職員が60歳に達した日後の最初の4月1日から7割水準の俸給月額となる場合も、役職定年による異動(管理監督職勤務上限年齢による降任等)により俸給月額が減額される場合も、「ピーク時特例」が適用される。(下記(4)イ関係)

 
(2) 算定式

退職手当は、次のように計算されます。

   退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給割合)+調整額
 

(注) 1円未満の端数は切り捨てます。

※ 「退職理由別・勤続期間別支給割合」は、退手法で定められた退職理由別・勤続期間別支給率に調整率を乗じたものです。(6)退職手当の計算例に記載されている「国家公務員退職手当支給割合一覧」を参照してください。
 

(3) 基本額


ア 俸給月額

退手法上の「俸給月額」とは、一般職の職員の給与に関する法律(以下「給与法」といいます。)に規定する俸給表の額と俸給の調整額(職務の複雑、困難若しくは責任の度や勤務条件が特殊な場合に俸給表の額を調整(加算)するもの。)の合計額をいいます(地域手当、扶養手当、俸給の特別調整額等の諸手当は含みません。)。給与法の適用を受けない行政執行法人の職員の場合は、各法人が定める給与規則におけるこれらに相当するものの額の合計額をいいます。

なお、退職の日に休職、停職、減給その他の理由により、俸給の一部又は全部が支給されていない場合には、これらの理由がないと仮定した場合にその職員が受けるべき俸給月額が退職手当の算定基礎となります。

イ 退職理由

職員の退職理由は、基本額を算定する上で、自己都合、定年・応募認定(「早期退職募集制度」参照)、死亡、傷病、整理等に区分されています。死亡、傷病による退職については、公務上と公務外に、公務外の傷病による退職については、通勤によるものと私傷病によるものに区分されます。

ウ 勤続期間

勤続期間は、上記イの退職理由とともに、退職手当の計算の基本的な要素です。

勤続期間は、職員としての引き続いた在職期間により計算されます。この計算は、月単位で行います(月の途中での採用、退職は、その月を1月として扱います。)。職員としての「引き続いた在職期間」には、地方公共団体や退手法施行令で定める公庫等における在職期間が通算されます。

ただし、次の場合等には、その期間の全部又は一部を在職期間から除算したものが勤続期間となります。

<期間の2分の1を除算するものの例>

  • 私傷病による休職、刑事休職及び研究休職(ただし、その内容が公務の能率的な運営に特に資すると認められる等の場合には除算されない。)の期間
  • 懲戒処分としての停職の期間
  • 育児休業の期間(ただし、子が1歳に達した日の属する月までの期間は3分の1を除算する。)

<期間を全て除算するもの>

  • 職員団体専従休職の期間
  • 自己啓発等休業の期間(ただし、その内容が公務の能率的な運営に特に資すると認められる等の場合には2分の1を除算する。)
  • 配偶者同行休業の期間

【除算期間の計算例】

3月31日から8月28日まで休職等の場合でみると、3月と8月は1日以上の勤務日があるので除算の対象とならず、4月から7月までの4月間が除算期間の対象となる。
 
① この期間が私傷病休職又は停職処分であった場合
          除算期間 = 4月 × 1/2 = 2月
② この期間が職員団体専従休職であった場合
          除算期間 = 4月



(4) 基本額の特例


ア  定年前早期退職者に対する特例(退手法第5条の3)

応募認定、公務上の傷病又は死亡、整理等により退職した者のうち、定年に達する日から6月前までに退職した者であって、その勤続期間が20年以上等であり、かつ、その年齢がその者に係る定年から15年を減じた年齢以上(定年が60歳の場合は、45歳以上)である者には、定年前早期退職者に対する退職手当の基本額に係る特例(定年前早期退職特例措置)が適用され、次に掲げる算式による額が退職手当の基本額の算定の基礎になります。

 基本額の算定の基礎となる額 = 退職日の俸給月額 ×{1+(3%(注)×定年年齢までの残年数)}

(注1)

給与法の指定職俸給表1号俸相当額以上4号俸相当額未満の者については、1年当たりの割増率2%が、また、4号俸相当額以上の者については、1年当たりの割増率1%がそれぞれ適用され、6号俸相当額以上の者については不適用となります。

(注2)

「(注1)」以外の者のうち、その者に係る定年年齢と退職の日におけるその者の年齢との差が1年である者については、1年当たりの割増率2%が適用されます。 


    

【早期退職募集制度】

各省各庁の長等は、募集実施要項を職員に周知することにより、早期退職希望者を募集することができます。

1 2つの早期退職募集

(1)  職員の年齢別構成の適正化を図るための募集(1号募集)
      退職時にその職員に係る定年から15年を減じた年齢以上(定年が60歳であれば、45歳以上)である職員が対象
(2)組織改廃等に伴う募集(2号募集)
      当該組織又は官署若しくは事務所に属する職員が対象

2 募集から退職までの大まかな流れ

(1) 早期退職希望者の募集
     各省各庁の長等が、募集対象者全員に募集実施要項を周知し募集開始
 
<募集実施要項>

・募集を行う目的(上記1の別)
・募集の対象となるべき職員の範囲
・募集人数
・募集の期間
・認定を受けた場合に退職すべき期日又は期間 等

(2)応募
    ・募集の期間中いつでも応募し、又はその応募を取り下げることが可能
    ・応募及び応募の取下げは、職員の自発的な意思に委ねられたものであることが必要

(3)認定
      各省各庁の長等は、応募者に対し認定(不認定の場合もある。)

(4)通知
      各省各庁の長等は、応募者に対し認定通知書又は不認定通知書を交付
 

イ  俸給月額の減額改定以外の理由により俸給月額が減額されたことがある場合の特例(退手法第5条の2)

在職期間中に、俸給月額の減額改定(いわゆるベースダウン)以外の理由(降格、 俸給表間異動等)により俸給月額が減額されたことがある場合で、特定減額前俸給月額(減額日における当該理由による減額がなかったものとした場合の俸給月額のうち最も多いもの)が退職日の俸給月額よりも多いときは、次の(ア)及び(イ)により算出した額の合計額を基本額とする「ピーク時特例」特例が適用されます。

※なお、定年の65歳への引上げ(1項参照)に伴い、退手法附則第15項として、60歳超の給与が減額された場合における退職手当の算定に当たり、当該減額が退職手当法第5条の2の俸給月額の減額改定には該当しないものとしてピーク時特例を適用させる規定を設けています。(上記(1)③関係

(ア)特定減額前俸給月額に係る減額日の前日に実際の退職理由と同じ理由で退職したものとし、かつ、同日までの勤続期間と特定減額前俸給月額を基礎として算定した基本額に相当する額

(イ)退職日俸給月額に次の(A)の割合から(B)の割合を控除した支給割合を乗じて得た額

   (A)退職日に、退職日までの勤続期間と退職日俸給月額を基礎として退職手当を算定した場合の支給割合
   (B)(ア)の算定に用いた支給割合

(注1)本特例は、平成17年改正法の施行日(平成18年4月1日)又は適用日である新制度切替日以降の減額が対象となります。
(注2)定年前早期退職特例措置の対象者は、「特定減額前俸給月額」と「退職日俸給月額」の両方が割増しの対象となります。
   
      (例)A円>B円のときに特例を適用

            
(5) 調整額

調整額は、在職期間中の貢献度に応じた加算額であり、基礎在職期間(退手法第5条の2第2項にある「基礎在職期間」)初日の属する月から末日の属する月までの各月毎に、当該各月にその者が属していた職員の区分(第1号区分~第11号区分)に応じて定める額(調整月額)のうち、その額が多いものから60月分の調整月額を合計した額です。

【退職手当の調整額区分表(給与法適用職員の例)】
 
区分1 -  指定職(6号俸以上)、これに相当する職員     95,400円 
区分2 -  指定職(5号俸以下)、これに相当する職員     78,750円
区分3 -  行(一)10級、これに相当する職員                70,400円
区分4 -  行(一) 9級、これに相当する職員                65,000円
区分5 -  行(一) 8級、これに相当する職員                59,550円
区分6 -  行(一) 7級、これに相当する職員                54,150円
区分7 -  行(一) 6級、これに相当する職員                43,350円
区分8 -  行(一) 5級、これに相当する職員                32,500円 
区分9 -  行(一) 4級、これに相当する職員                27,100円
区分10- 行(一) 3級、これに相当する職員                21,700円
区分11- その他の職員(非常勤職員を含む。)                      0円
 
(注) 勤続9年以下の自己都合退職者等は調整額が支給されない。また、勤続4年以下の退職者(自己都合退職者以外)及び勤続10年以上24年以下の自己都合退職者は調整額が半額になる。
 

〈参考〉他の主な俸給表における調整額の区分例

 「*1」については、皇宮警部補以上の階級にあった期間が156月を超える皇宮護衛官、副看守長以上の階級にあった期間が120月を超える刑務官又は警備士以上の階級にあった期間が24月を超える入国警備官に適用

 「*2」については、副看守長以上の階級にあった期間が60月を超える刑務官又は警備士補以上の階級にあった期間が60月を超える入国警備官に適用

 

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